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心を奪われる曲

 ある日、たまたま、ルネサンス期の音楽をランダムに聞いていたら、ヨハネス・オケゲムのある歌曲に出くわした。いや、たんに、オケゲムの曲だったからではない、フェラーラ・アンサンブルの演奏と、レナ・スザンネ・ノーリンの歌声に魅了されたのである。

 いや、初めは少し心に引っかかったという程度だったのだが、翌日、履歴をたどってもう一度聴きたくなり、その後また聴くうちに、そのゆったりしたテンポのうちに、切実な感情が抑制されながらも滔々と流れていくような歌曲にすっかり心が奪われるように感じられたのである。すごいな、これまで知らないできたけど、ルネサンス期の曲にもこんな魅力が詰まっているとは。


 時間のある方は、どうぞご一聴を↓





 歌詞を調べたが、古い仏語なので判るようで判らない。幸いなことに、現代の仏語の訳(http://espace-holbein.over-blog.org/article-quand-de-vous-seul-je-pers-la-veue-44599038.html
)と英語の訳(https://www.lieder.net/lieder/get_text.html?TextId=92572)を見つけたので、それらを合わせたような日本語訳を以下に載せておこう。




(原文)

Quant de vous seul

Quant de vous seul je pers la veue
De qui tant chiere suis tenue
Mon mallors si tresfort m'assault
Qu'a peu que le cuer ne me fault
Tant suis de douleur esperdue.

Pour estre vostre devenue
Plus que nul qui soit soubs la nue
Toute ma joie me default
Quant de vous seul je pers la veue
De qui tant chiere suis tenue
Mon mallors si tresfort m'assault

Dont je voi bien que je suis nue
De tous biens comme beste mue
A qui de plus riens il me chault
Car je scais bien qu'estre me fault
Seulle de tous biens despourveue.

Quant de vous seul je pers la veue
De qui tant chiere suis tenue
Mon mallors si tresfort m'assault
Qu'a peu que le cuer ne me fault
Tant suis de douleur esperdue.




(日本語訳)

 こんなに深く私を愛してくれるあなたを見失ってしまうだけで、
心が私から去って行くくらいに、私はひどく不幸に襲われます。
それほど悲しみに打ちひしがれるのです。

 空の下のどんなものよりもあなたのものになってしまったのだから、 私の喜びはすべて私から去って行きます。   
 こんなに深く私を愛してくれるあなたを見失ってしまうだけで、
 私は、ひどく不幸に襲われます。

 とてもよく判っています、私が、善良さをすべて失って、物言わぬ動物のようになっていることを。
 他の何にも関心のない者になっていることを。
 私は独りぼっちで、あらゆる善良さをなくしたことは知っていますから。

 こんなに深く私を愛してくれるあなたを見失ってしまうだけで、
 心が私から去って行くくらいに、私はひどく不幸に襲われます。
 それほど悲しみに打ちひしがれるのです。







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