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第三次世界大戦はすでに始まっている

 「第三次世界大戦はすでに始まっている」。そんな刺激的な見出し思わず引き寄せられてしまった。『シュピーゲル』誌がヌリエル・ルビーニにインタビューした記事を紹介する。何気なく語られているが、ひょっとしたら、どれも心の底にとどめておくべきことかもしれない。

 ルビーニは、2008年のリーマンショックやコロナ危機の初期にグローバル経済の崩壊を予言した世界的に著名な経済学者。ペシミストで有名らしい、今度の悲観論は正しいかどうか。

 

"World War III Has Already Effectively Begun"

Interview Conducted By Tim Bartz und David Böcking
28.10.2022, 13.53 Uhr

 https://www.spiegel.de/international/business/star-economist-roubini-on-the-global-crises-world-war-iii-has-already-effectively-begun-a-fd3126eb-4dd4-42fc-889e-27e4165f6702



「 第三次世界大戦はすでに始まっている


DER SPIEGEL:ルビーニ教授、あなたは「破滅博士(Dr. Doom)」というあだ名が好きではなく、「リアリスト博士」と呼ばれたいと思っているとのこと。しかし、新著で、あなたは、私たちの未来を危険にさらす「10 の巨大脅威」について描写しています。それ以上に暗い話はないでしょう。

Roubini : 私が書いている脅威は現実のものです-誰もそれを否定しないでしょう。私は1960年代から1970年代にかけてイタリアで育ちました。当時、私は大国間の戦争や核の冬について心配したことはありませんでした.ソ連と西側の間に緊張緩和がありましたからね。気候変動や世界的なパンデミックという言葉は耳にしたこともなかった。そして、ロボットがほとんどの仕事を奪うことについて心配する者もいなかった。貿易やグローバル化はより自由になっていたし、完璧ではないにしても安定した民主主義に暮らしていました。債務は非常に少なく、国民は過度に高齢化しておらず、年金や医療制度の借入金からの負債もなかった。それが私が育った世界です。それが、今や、今あげたすべてのことについて私は心配しなければならない - 誰もが心配しています。

DER SPIEGEL: でもみんな心配などしてますか? あなたの言葉は、荒野で叫んでいる声のように聞こえますが。

Roubini : IMFの会議でワシントンにいたときのことです。経済史家のニール・ファーガソンは、そこでのスピーチで、1940年代のような戦争ではなく、1970年代のような経済危機で済むならばラッキーだろうと語った。国家安全保障問題担当顧問たちは、NATOがロシアとウクライナの間の戦争に巻き込まれたり、イランとイスラエルが衝突の道を進んでいることに懸念を示していました。そして今朝、バイデン政権は中国が遅かれ早かれ台湾を攻撃すると想定しているという記事を読みました。正に言えば、第三次世界大戦は事実上すでに始まっています、ウクライナとサイバースペース上では確かにそうでしょう。

DER SPIEGEL: 政治家たちは大きな危機の多くが同時に生じていることに参ってしまっているように見えます。どの危機に優先して取り組むべきでしょうか?


Roubini : もちろん、政治家はイランやイスラエルや中国のことを考える前に、ロシアやウクライナのことを考えなければならない。しかし、政策立案者はインフレと景気後退、つまりスタグフレーションについても考えるべきです。ユーロ圏はすでに景気後退に陥っており、それは長くひどいものになると思います。イギリスはさらにひどい。パンデミックは封じ込められたように見えますが、新しいコロナの亜種がやがて出現するかもしれない。そして気候変動は、スローモーションのようであはあるが速度を速めつつある災難です。私の著書で述べている10 の脅威のそれぞれについて、遠い将来ではなく、今このときに起こりつつある10の実例を挙げることができます。気候変動に関する実例がいいですか?

DER SPIEGEL:そうしたいならばどうぞ。

Roubini : この夏、米国を含む世界中で干ばつが発生しました。ラスベガスの近くでは干ばつがひどく、1950 年代のギャングの死体が干上がった湖に姿を現したほどです。カリフォルニア州では、農業従事者が水利権を販売していますが、それはどんな作物を育てるよりも儲かるからです。そしてフロリダでは、海岸沿いの家屋に対して保険に加入することはできなくなりました。アメリカ人の半分は、最終的には、中西部またはカナダに移住する必要があるでしょう。それは科学であって、たんなる憶測ではないのです。


DER SPIEGEL: あなたが述べるもう一つの脅威は、大陸における米軍のプレゼンスを危険にさらさないために、中国とのビジネス関係を制限するよう米国がヨーロッパに圧力をかけるかもしれないというものです。そのシナリオはどのくらい先の話ですか?

Roubini : それはすでに起こっています。米国は、AI、量子コンピューティング、軍事用途のために半導体を中国企業に輸出することを禁止する新しい法案を可決しました。ヨーロッパの人々は、米国とも中国とも取引を続けたいと考えているでしょうが、国家安全保障上の問題からそれはできなくなるでしょう。貿易、金融、テクノロジー、インターネット: すべてが二つに分裂することになります。

DER SPIEGEL: ドイツでは今、ハンブルク港の一部を中国の国有企業コスコに売却すべきかどうかで論争が起きています。あなたならどうアドバイスしますか?

Roubini : このような取引の目的何か考える必要があります。ドイツはすでにロシアのエネルギーに依存することで大きな過ちを犯しました。中国はもちろん、ドイツの港を軍事的に占領するつもりはないでしょう。アジアやアフリカではありうるかもしれませんが。でも、この種の協定を進める経済的論拠があるとすれば、それは、中国におけるヨーロッパの工場が接収されならば逆襲できる、ということにしかないでしょう。そうでなければ、あまり賢い考えではない。


DER SPIEGEL: あなたは、ロシアと中国がドルとSWIFTシステムに代わるシステムを構築しようとしていると警告しています。しかし、両国はこれまでのところ失敗していますね。

Roubini : 決済システムだけの問題ではありません。中国は、スパイに使用できる補助金付きの5G技術を世界中で販売しています。私は、アフリカのある国の大統領に、5Gテクノロジーを西側ではなく中国から手に入れる理由を尋ねました。彼は私に、われわれは小国なので、どっちみちスパイ活動の対象になるでしょう、それなら、中国の技術を採用したほうがいい、なぜなら安いのだから、と。中国は、世界の多くの地域で経済、金融、貿易の力を拡大しています。


DER SPIEGEL: しかし、人民元は、長期的に見て、本当にドルに取って代わるのでしょうか?

Roubini : 時間はかかりますが、中国人は長期的にものを考えるのが得意です。彼らはサウジに対して、石油の価格を人民元で設定し、人民元で支払えるように提案しました。中国には世界のどこよりも洗練された支払いシステムがあります。アリペイとWeChatペイは、毎日 10 億の中国人が数十億件の取引に使用しています。パリのルイ ヴィトンではWeChatペイで買い物をすることができます。




DER SPIEGEL: 1970年代には、エネルギー危機もあったし、高インフレと成長の停滞、いわゆるスタグフレーションもありました。それと似たようなことを今われわれは経験しているのでしょうか?

Roubini: 今日はもっとひどいです。当時は今日ほど多くの公的債務や民間債務がありませんでした. 中央銀行が今、インフレに対抗するために金利を引き上げると、多くの「ゾンビ」企業、金融仲介業、政府機関が倒産することになります。その上、石油危機は少数の地政学的ショックによって引き起こされましたが、今日はさらに多くのショックがあることが考えられます。台湾に対する中国の攻撃の影響を想像してみてください。台湾は、世界の全半導体の50%を生産しているし、ハイエンド半導体に至っては80%です。台湾が攻撃されたらそのショックは全世界に及びます。今日、私たちは石油よりも半導体に依存しているからです。

DER SPIEGEL: あなたは各国中央銀行の面々と彼らの金融緩和策に非常に批判的です。最近まともな中央銀行はありますか?

Roubini : どっちに転んでも、ひどい結果になるでしょう。高い政策金利でインフレと戦って、実体経済と金融市場にとってハードランディングを引き起こすか、弱気になって見て見ぬふりをして金利を引き上げないなら、インフレは上昇し続けます。イングランド銀行がすでに行ったように、FRBとECBは見て見ぬふりをするのではないかと私は思います。

DER SPIEGEL: 他方で、インフレ率が高いと債務が吹き飛ぶので、有益かもしれないという考え方もできますが。

Roubini: たしかにそうですが、新たな債務ももっと高くなりますからね。インフレが上昇すると、貸し手はより高い金利を課すことになります。一例をあげると、インフレ率が 2% から 6% になった場合、同じ利子を維持するには、米国債の金利は4% から 8% に上昇しなければならないし、住宅ローンやビジネスローンの民間借入コストはさらに高くなります。このことは、安全と考えられている国債よりもはるかに高い金利を提供しなければならないため、多くの企業にとって非常に高くつくことになります。現在、私たちは非常に多くの債務を抱えているため、こうなれば、経済、金融、財政の完全な崩壊を引き起こしかねない。これでもまだワイマール共和国のようなハイパーインフレではないのです、一桁のインフレにすぎないのです。

DER SPIEGEL: あなたが本で述べている最重要のリスクは気候変動です。気候災害の起こりうる結果を考えると、債務の増加は二次的なことではないでしょうか?

Roubini : 巨大な脅威はすべて関連し合っているため、すべてを同時に心配しなくてはなりません。一例をあげると、現在、経済を縮小させずに CO2 排出量を大幅に削減する方法はありません。2020 年は過去 60 年間で最悪の不況でしたが、温室効果ガスの排出量は 9% しか減少しませんでした。しかし、力強い経済成長がなければ、債務問題を解決することはできません。したがって、私たちは排出なしで成長する方法を見つけなければなりません。

DER SPIEGEL: これらの並行した危機を考えると、中国やロシアのような権威主義システムに対して民主主義が生き残る可能性はどのくらいだと思いますか?


Roubini: 気がかりです。大きなショックが起こると、民主主義国は脆弱になります。そんなとき必ずや、マッチョな男が現れて「俺が国を救う」と言って、すべてを外国人のせいにするものです。それこそプーチンがウクライナに対してしたことです。来年、エルドアン大統領はギリシャに対して同じことを行い、危機を作りだそうとするかもしれません。そうしないと選挙に負けるかもしれませんからね。ドナルド-トランプが再び出馬して選挙に負けようものなら、今度こそ公然と白人至上主義者に国会議事堂を襲撃するよう呼びかけるかもしれない。米国で暴力と本当の内戦が見られるかもしれない。ドイツでは、今のところ状況は比較的良好に見えます。しかし、経済的にうまくいかず、右翼の野党に投票する人が増えたらどうなるでしょう?

DER SPIEGEL:あなたは災難の予言者としてだけでなく、大のパーティー好きとしても有名になりました。最近でもパーティー気分なんですか?

Roubini : 私はこれまでもつねに、社会的イベントだけでなく、アートやカルチャーや書物についてのサロンを主催してきました。パンデミックの間、私は自分のユダヤ人としてのルーツを再発見したのです. 今日でも、素敵なセレモニーと生演奏のある安息日のディナーに 20人もの人を招待したいくらいです。私が深刻な質問をし、全員が答えなければならないイベントを開催しますよ。おしゃべりではなく、人生と世界全体についての深い会話です。人生は楽しむべきですが、世界を救うために少しは行動するべきです。

DER SPIEGEL:というと?

Roubini : 私たちが排出する二酸化炭素の総量は大きすぎます。温室効果ガス排出量全体のかなりの部分は牧畜に由来します。だから私はペスカタリアン (鳥獣の肉は避けるが魚は避けずに食べる、という立場を取る人々を指す)になり、鶏肉を含む肉を食べないようにしました。

DER SPIEGEL:あなたは,一年のうち4分の3を旅行に費やしていたことで有名でしたが。

Roubini : 今でも年中旅行をしてますよ。でも一つだけ言っておくと、私はニューヨークが大好きなのです。パンデミックの間、私は、他の多くの人のように、ハンプトンズやマイアミに避難しませんでした。 私はここにとどまり、、Black Lives Matter のデモを見たり、ホームレスを支援するボランティアをしたりしました。仕事と収入を失い、家賃を払えなくなった多くのアーティストの友人の苦労を毎日目にしました。もしニューヨークをまたハリケーン・サンディが襲って、暴力と混乱を生み出すことになるかもしれないとなっても、私はとどまるでしょう。われわれは、 ありのままの世界と向き合わなければならないのです。たとえ核兵器使用の恐れがあろうともね。そうなれば、最初の核爆弾がニューヨークに落ちても、次の爆弾はモスクワに落ちるでしょうからね。

」(おわり)。












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