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なでしこジャパン ノルウェー戦のBBCの視聴者評 [海外メディア記事]

  イギリスBBCによるなでしこジャパンの対ノルウェー戦のオンライン実況に寄せられた視聴者のコメントが面白いので紹介したいと思った。

   私は、2011年になでしこが優勝したときも、欧米での批評をいくつも読んだがネガティブな評価が多かったように覚えている。やっかみも少なからずあっただろうが、要するに、洗練されてないし退屈なサッカーだ、時の運で勝っただけという評価が多かった。
   それに比べて、今回のなでしこに対しては、サッカーの質が断然高い、見ていてわくわくする、「楽しませてくれる(entertaining)」といったコメントが大半である。何という違いだろうか。
   これは進歩なのだろうか? たしかにそうに違いないが、しかし、昨年暮れから今年初めにかけてのパッとしなかった遠征のあたりで、これほどのチームに変貌を遂げるとだれが予想できただろうか? 専門家も含め多くの人が困惑の念の入り混じった嬉しい予感を抱き始めているといったところだろう。

いずれにせよ、イギリス人の率直な感想のいくつかをご覧ください。

https://www.bbc.com/sport/football/66404312





 「
・ 「日本発の美しいフットボール。これほど才能豊かなチームを目にするは実に楽しい」(Steve P 11:11 5 Aug)。 

・ 「私の意見では、日本はこのワールド・カップで最も楽しませてくれるチームだ。楽しんでゴールを決めているし、ディフェンスも堅固だ。山下は素晴らしいゴールキーパーだ。米国かスウェーデンとの一戦が待ちきれない」(Wee Brian 11:06 5 Aug)。


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・ 「最高のチームかはわからないが、最も楽しませてくれるチームであるのは確かだ。ワールド・カップの日本男子チームそっくりだね。見ていて楽しい。」(RoyKent 16:48 5 Aug)

・ 「日本は、これまで今大会で私が見たすべてのチームより1ランクか2ランク上だと思った」(NeverTrustaTory 11:02 5 Aug)

・ 「ボールをめぐって日本人選手がハンセンに倒されたが – 見た目にも痛そうだったが、ネイマールのようにのたうち回ることなく – 彼女は顔をしかめながら起き上がり、深呼吸をしてプレーを続けた。こうした態度が大好きだ」(Curious 12:37 5 Aug)。

・ 「日本おめでとう。まったく当然の勝利だった。私が見るところ、日本は、このワールド・カップのどの出場国よりも技術的に優れているし、別の組のチームと対戦しても同じ結果になるだろう」(NeverTrustaTory 11:00 5 Aug)。

・ 「わくわくした。最初の試合ではポゼッション率が低いながら、素晴らしいカウンターとフィニッシュで4得点をあげた。今日はポゼッションを高めたが、前と変わらない効果をあげた – 得点以上にノルウェーとは開きがあった。ノルウェーは、スウェーデンやドイツと同様、ゴールめがけてむやみにボールを蹴りこむという北ヨーロッパ特有の戦術に頼るばかりだった。伝統的には、多様なスタイルのプレ-ができるチームが、ワールド・カップでは成功を収めてきた。米国が他国より抜きんでていたのは(ジルフィア・ナイト率いるドイツ・チームは別だが)そういう理由による。そういうプレーが出来ていることが日本を脅威にしている」(youlesie23 12:39 5 Aug)。

・ 「何とすごいチーム。彼らはフットボールのプレーの仕方が判っている。それは、判ってしまえば、とても簡単なことだ。スペースと速さを利用して、スペースにボールを蹴りこんで、そこに駆け込む。フットボールはかくあるべきというような鮮やかなカウンター攻撃だ」(London2012 12:02 5 Aug)。

・ 「これまでのところこの大会の日本は最も楽しませてくれるチームだったし,有力な優勝候補だと見なさなければならない。日本チームは、統率が取れていて、とても組織化されたフットボールをしている。カウンター攻撃は際立ち、ミット・フィールドは群を抜いて今大会のベストだ」(Finkelstein 13:53 5 Aug)。

・ 「ノルウェーはあまりに消極的で高さのアドバンテージを利用していなかった。進歩したとは言い難かった」(Mal 11:28 5 Aug)。

・ 「日本は観ていてとても楽しい」(Jenny 12:20 5 Aug)

・ 「ブライトンが第二の三苫マジックをやってくれる別の日本人プレーヤーを探しているときに、どれほど多くのWSLのクラブが宮澤を獲得する資金に思いをめぐらせていることか」(Dela Waros 14:31 5 Aug)

・ 「日本の三番目の得点につながったあのパスは、デ・プルイネ級のパスだった」(RoyKent 17:20 5 Aug)

                               」(おわり)









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なでしこジャパン スペイン戦後のBBCの記事 [海外メディア記事]

 なでしこジャパンの活躍はうれしい限りだが、世界もようやく注目し始めるようになった。スペイン戦後、BBCがなでしこを優勝候補にあげている記事を紹介する。



Women's World Cup 2023: Japan 'a joy to watch'
By Neil Johnston
BBC Sport at Wellington Regional Stadium
https://www.bbc.com/sport/football/66360475



「  日本は「見ていて楽しい」チーム



 日本は、2011年の女子ワールドカップで優勝した黄金期以降、苦境にたえてきた。ドイツでのあの勝利から12年が経ったいま、上げ潮の時期がまた訪れようとしているのだろうか?

 なでしこは、ウェリントンでスペインを4-0で破りグループCを首位で通過しベスト16に進出することで、2023年の大会に真剣に取り組んでいるという強力なメッセージを発信した。

 元スペイン代表のMFヴィッキー・ロサダはITVで「日本の陣形を固めた守備的なプレーも、カウンター攻撃も、マスタークラス級だった」と語った。

 元イングランド代表のFWエニオラ・アルコは「日本は、あらゆる点で、今回のワールド・カップでわれわれが見た中で最高のチームだと思う」と付け加えた。

 日本は、土曜日午前9時(BST)、ニュージーランドの首都でノルウェーと対戦する。2019年のフランスではベスト16のステージで敗退したが、今回は最後まで勝ち上がっていけるだろうか?


 「日本はチャンスを無駄にしない」


 日本代表監督の池田太は、ウェリントン・リージョナル・スタジアムでの試合後の記者会見で15分間質問に答えた後、日本のメディアから拍手を浴びながら部屋を出た。

 それに先立ち、選手たちも、Fifaランキングで日本より5ランク高い6位のスペイン・チームに圧勝した後、スタンディング・オベーションの中ピッチを後にしていた。

 日本の守備は堅固で、攻撃は破壊的だ。ニュージーランドで3試合を行ったがまだ無失点である一方、大会最多の11ゴールを挙げた。
 さらに、宮澤ひなたはグループリーグ初戦のザンビア戦で決めた2得点にさらに2ゴールを加えたことで、得点王争いのトップにおどりでた。
 信じられないことだが、日本は、ポゼッション率がわずか23%だったにもかかわらず、スペインを知恵で上回った。

「日本はチャンスを無駄にしない」と元アイルランドのGKエマ・バーンはITVに語った。
「ハーフ・タイムまでに3回のチャンスと3つのゴール。ポゼッションの数字なんて気にしない – 私だってそっちのほうがいいわ」。


 
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この試合、日本は相手ボックス内でわずか3回のタッチからの得点で、ハーフタイム時点で3-0とリードした。





「見ていて楽しかった」


  日本が女子ワールド・カップのグループ・ステージで全勝するのは、2015年大会に次いで2度目である。8年前、日本は決勝に進出したが、決勝でアメリカに敗れた。ロサダは、8月20日にシドニーで行われる決勝戦まで日本が勝ち進むことがありうると考えている。

 「日本が示したマスタークラスの試合だった」と彼女は付け加えた。

 「日本はスペインのようなチームに勝てることを証明した。日本側から見ていてとても楽しかった」。

 アルコはさらに「日本はやることすべてにおいて沈着冷静だった。フィニッシュのときであれ、守備的に陣形を固めたときであれ、攻撃中やボールを失ったときでさえ、彼らのカウンター攻撃のプレーは並外れたものだった」と付け加えた。



  5人の変更、4つのゴール

 日本代表チームの才能は豊富だ。
 5日前のダニーデンでコスタリカを2-0で破ったチームから池田は5人の選手を変えたのに対して、スペインは1人を変更しただけだったが、これは最強のチームに近い選手起用だった。

 スペイン戦での日本の先発メンバーにはリヴァプールのMF長野風花とウェストハムの清水理紗と林穂乃香のデュオが出場し、マンチェスター・シティのMF長谷川唯はサブとして出場した。

 途中出場の守屋都弥のアシストから田中美南が素晴らしい4点目を決めたのだから、ベンチからのインパクトも加わった。

 
 「1、2試合目はボールを保持する時間はもっとあったが、カウンターを警戒しなければならなかった」と池田は語った。「スペインとのこの試合では、守備に回る時間が多いことは分かっていた。自分たちが望む試合をするためには、あらゆるチャンスを活かさなければならないことも分かっていた。

 「その点で上手くいきました」。 

                                       」(おわり) 












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ドイツの敗北の伝えられ方 [海外メディア記事]

 ドイツ敗北のニュースを各国の新聞がどう伝えたかを、『シュピーゲル』誌が簡潔に紹介している。イタリアとスペインの新聞が「ハラキリ(Harakiri)」という表現を使っているが、日本でほとんど使われなくなった言葉だが、向こうでは、それほど一般的に使わているのだろうか? それはともかく、伝え方が素っ気ないのは、『シュピ-ゲル』がワールド・カップにあまり乗り気でないのか、あるいは、そもそもドイツで盛り上がってないからなのか、それともただの負け惜しみなのか?




Der Fall der Götter: Nach Argentinien stürzt auch Deutschland ab


https://www.spiegel.de/sport/fussball/wm-2022-deutschland-unterliegt-japan-die-pressestimmen-der-fall-der-goetter-a-0b2f1c4d-34ff-4c22-9b85-7f53459e1f7d




「 神々の失墜: アルゼンチンに続きドイツも倒れる
 ドイツはワールド・カップの開幕戦で日本に敗れた。国際的な報道機関は「ハラキリ」や「強豪が倒れた日々」について書いている。その概要を紹介

24.11.2022,


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サッカーのドイツ代表チームは、カタールで開催されたワールドカップで、得点のチャンスが何度もあったにもかかわらず、開幕戦で敗北。ずっと優勢のように思われたが、1対2(前半1対0)で日本に屈した。海外メディアの反応は次の通り。


イタリア :

La Repubblica: 「神々の失墜:アルゼンチンの後ドイツも倒れる」。

Gazzetta dello Sport: 「ドイツのハラキリ: 日本は打つ手がはまり、劣勢からの追い上げで2対1で勝利。


スペイン :

Marca: 「日本はドイツを絶句させた。ドイツ人は差別に抗議したが、最後に笑ったのは日本人」。

As: 「ドイツのハラキリ。フリックのチームは、手中にしていた試合を勝ち切ることができなかった。このワールド・カップの二番目に大きな驚きをもたらしたのは日本人のファイティング・スピリットだった」。

Sport:「スペインとの初マッチに先立って、日本はドイツ・チームにきつい一撃を食らわせた」。

Mundo Deportivo : 「スペインと同組で日本がドイツを倒す!  日本代表は、世界チャンピオンに四度輝いたドイツに対して歴史的な勝利を収めた」。

El País : 「フリックの選手交代のせいでドイツは日本に負けた。監督がギュンドアンとムシアラをゴレツカとゲッツェに交代させて日本に追いつかれるまでは、明らかにドイツ・チームは思い通りやっていた」。

スイス:

Blick : 茫然自失だ。危なげない勝利でワールドカップの初戦を終えるどころか、90分後、カタールのドイツ人は混乱状態に陥っていた。 (...) 日本はセンセーションを巻き起こした。そしてドイツ人は皆無言で立ち去った」。


オランダ :

Algemeen Dagblad : ドイツは(試合前の)声明では感銘を与えたが、その足に語らせることはなく、日本に屈した。水曜日のドイツが印象深かったのは、日本戦の試合前だけだった。FIFAに対する挑発的な声明で、選手たちは明確なメッセージを伝えた。その後のパフォーマンスははるかに説得力がなかった。つまり、4年前と同じように、ドイツ・チームは初戦でつまずいたわけだが、今度は日本に対して1対2だった。


イギリス 

The Sun : 4年前はメキシコ人が手を振って別れを告げた。そして、今年、メキシコ人の波がハリファ・スタジアムに押し寄せるころには、ドイツ人は、日本のスーパー・サブのおかげで、またしても早々に帰国の途についているかもしれない」。

Daily Mirror :  日付がかわって、またもやワールド・カップに衝撃が走る。ドイツはトーナメントの常勝チームとしてカタールにのり込んだが、ブンデス・リーグの2人の選手、堂安律と浅野琢磨が、後半の8分間にゴールを決め、ハンジ・フリックのチームを、わずか1試合で、グループ・ステージ敗退の瀬戸際に追い込んだ」。

The Guardian :  「日本のドイツ戦初勝利はワールド・カップに激震をもたらしたが、それは森保一の勇気に対する報酬だった」。


アメリカ :


Washington Post : 0-1の劣勢から2-1で日​​本がドイツに勝利したことは、サウジアラビアがアルゼンチンに2-1で勝利した奇跡には及ばないものの、ワールド・カップにさらなる宝物をもたらした」。

New York Times :  強豪が倒される日々だった。ワールド・カップの3日目、アルゼンチンの人々は、いじめのような敗北の後、茫然自失の状態で取り残された。4日目はドイツ人の番だった。トーナメント常勝のチームは、たんなる穴埋めと思われたチームからショックと屈辱を与えられた。


」(おわり)












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培養肉が商品化に近づく [海外メディア記事]

 培養肉が商品化に近づいているようだ。採算の問題はまだありそうだが。『シュピーゲル』誌の記事を紹介。  

 US-Behörde gibt grünes Licht für Laborfleisch
 

18.11.2022, 16.49 Uhr

 https://www.spiegel.de/wissenschaft/usa-behoerde-haelt-laborfleisch-fuer-sicher-a-53696696-70bc-4b19-93ef-b1761f1cdc90



「 米国食品医薬品局が培養肉にゴーサインを出す

 米国ではもうすぐ人工的に培養された肉が利用できるようになる? 米国のメーカー「アップサイド・フーズ」は、バイオリアクター(発酵槽)由来の鶏肉で最初の成功を収めた。

 18.11.2022, 16.49

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 動物が死ぬ必要はもうない。環境は保護される。実験室で生産される肉はそう約束している。だが安全なのか? たしかに安全であると米国食品医薬品局 (FDA) は判断した。FDAの声明 によると、カリフォルニアの企業の培養肉は「別の方法で製造された同等の食品と同じくらい安全」である。動物細胞から培養された肉を人間の食用に問題はないと当局が格付けたのはこれが初めてである。

 推定によると、食料生産は、気候に有害なガスの人為的排出の3 分の1を引き起こしており、特に大きな比率を占めるのが食肉生産である。牧草地と農地は、地球の居住可能な土地の約半分を占め、淡水の供給量の約70%を消費している。人工的に製造される肉が流通するようになれば、気候のバランスは改善し、動物は殺されずに済むようになる。


 良心が痛まない消費?

 アップサイド・フーズ社は細胞培養でニワトリを繁殖させている。この目的のために、生体から細胞を採取し、その細胞が、「バイオ・リアクター」と呼ばれるステンレス鋼のタンクで肉に成長する。そのために動物は死ぬ必要はない。

 アップサイド・フーズ社は、 いわゆる市販前協議をFDAに求めた。製品の安全性に懸念があるかどうかを、食品局の専門家が独自の観点からチェックするわけである。FDAから評価されれば承認というわけではなく、米国農務省によるさらなる検査が必要となる。培養肉が市場に出回るまでには、まだ少なくとも数か月かかる。

 代替肉は活況を呈している。投資家は、年間数億ドルをこのビジネスに注ぎ込んでいる。しかし実は、市場に出回っている代替肉のほとんどすべては植物ベースのもので、培養肉は生産が難しく、高価であると見なされている。8年前に作られたハンバーガーのパテは25万㌦もした。これまでのところ、培養肉の収益性の見通しに関する研究はまだわずかしかない。


 三ヶ月後には出荷が可能

 これまでのところ培養肉を消費者に販売できる唯一の国はシンガポールだけである。そこでは実験所由来ののチキンナゲットが17㌦で売られている。アップサイド・フーズ社の製品が承認された場合どれくらいの値段になるかは明らかになっていない。


 同社が培養するニワトリ細胞は、動物飼料にもあるアミノ酸、脂肪、糖、塩、ビタミン、微量元素を含む独自に開発した養分の培養基で育成される。同社のウェブサイトによると、肉は三ヵ月後には出荷が可能になる。その後、肉は育成される容器の形に成形されるが、色は通常の肉よりも少し明るいが、その他の点では生肉に似たものとなる。

 FDAによると、培養肉を開発しているのはカリフォルニアの企業だけではなく、同様の申請書を提出した企業は他にもあるという。 その中には、海洋生物からシーフードを培養しようとしている企業もあるという。「世界は食品革命を目の当たりにしており、FDAは食品部門のイノベーションを支援する義務がある」とFDAのロバート・:カリフ氏は述べている」(おわり)。












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ドナルド・トランプのカリスマ的な愚かさ [海外メディア記事]

スーパー・チューズディの勝利で、ドナルド・トランプの周辺がさらに騒がしくなりつつある。「トランプおろし」の動きが始まったようだが、はたしてうまく行くかどうか。



 気に入らない女性たちを「太った豚(fat pigs)」、「でぶ(slobs)」、「むかつく生き物(disgusting animals)」と呼んで顰蹙(ひんしゅく)を買ったのは序の口で、ライバルのルビオを「軽量(lightweight:未熟という意味もある)」、クルーズを「嘘つき(lying)」と呼ぶのを止める気配はないし、政策をくるくる変えても大して気にしないようだ。貿易で中国に負けている現状を批判する一方で、トランプの名前がプリントされた自分のTシャツが“Made in China”であっても、そんな矛盾など気に留めない(http://www.theguardian.com/commentisfree/2016/mar/05/republicans-donald-trump-party-anger)。 昨日の討論会では、自分の一物(いちもつ)の大きさを誇ったようだ(“Donald Trump defends size of his penis” http://edition.cnn.com/2016/03/03/politics/donald-trump-small-hands-marco-rubio/)。



 下品さが露呈したり自己矛盾を指摘されたりするのは、普通の政治家にとっては致命的になるのだが、そんな普通の尺度は通用しない。だから、前回の選挙でオバマと争った保守本流のロムニーが、トランプを「インチキ、詐欺師(a phony, a fraud)」とこき下ろしたが(http://edition.cnn.com/2016/03/03/politics/mitt-romney-presidential-race-speech/)、その程度ではぜんぜん堪(こた)えない。こういう怪物をへこませるにはどうしたらいいか、実は、誰にも判っていないのが現状ではないだろうか? 



 なぜトランプが人気化するのか、それをスピーチの特徴から解説した文章がPBSにあったので読んでみたが、トランプのスピーチは、まあ、解説するまでもない内容である。スピーチの最後の部分をちょっとだけ紹介するにとどめよう(http://www.pbs.org/newshour/updates/trumps-totally-unorthodox-take-on-the-political-stump-speech/)。



“Look. We don’t win anymore. We don’t win on trade, we don’t win at the borders. We don’t win with our military. Our military, the greatest military in the world, we can’t even beat ISIS,” Trump said. “Oh, we’re going to knock ISIS out so fast.・・・ We’re going to win, win, win, win,” Trump concluded. “We are going to make America great again, greater than ever before. I love you. Go out and vote. I love you all. Thank you, Georgia. Thank you. We love you. Thank you.””


 「 「いいかい、われわれはもう勝利者じゃないんだ。貿易で勝っていない。国境で勝っていない。軍事でも勝っていない。米軍は世界でもっとも偉大な軍隊なのに、ISISを打ち負かすことすら出来てないじゃないか。(わたしが大統領になれば)、ISISなんかすぐにノック・アウトだよ。・・・ われわれは勝利するだろう。勝って勝って勝ちまくるだろう」。 トランプは次のように締めくくった。「われわれはアメリカを再び偉大にするし、かつてないほど偉大にするだろう。大好きだ。投票に出かけよう。みんな、大好きだ。ありがとう、ジョージア。ありがとう。愛してる、ありがとう」」。




 難しい単語は出てこないので、英語の出来ない日本の中学生でも判るような内容である。それに、世界には、勝ちと負けしかないという価値観も、判りやすいといえば、これほど判りやすいものはない。 ”We’re going to win, win, win, win ”という言葉に感激する人は、無敵のヒーローにあこがれる子供そのものである。そうした単純な価値観を共有できない人間は、「太ったブタ」、「むかつく生き物」なのである。



 単純な意味でトークが面白く、複雑な現実を単純化して話すことができる人間には、多くの人が魅力を感じる。まして、金があり権力も加われば、多くの人がその人間になびいていくことは避けがたい。その人間に自己矛盾や下品さがあっても、そんなことは大したことではないように思われるようになる。多くの人が、トランプのうちにカリスマ的なものを見出すようになったのだろう。

 

 多くの人がエリートの小賢(こざか)しさよりもカリスマ的な愚かさの方を好むことには、つねにそれなりの理由がある。それに、エリートの政治家たちがいったい何をやってくれたんだという、困窮状態に追い込まれた白人層の悲哀がトランプ支持者たちからは漂ってくる。そこには、確かに、切実な現実がある。しかし同時に、トランプ支持拡大の動きには、人間のとても嫌な面が露呈しているのも確かである。


カリスマ的な愚かさが勝つのか、最終的には良識が制するのか? 個人的に、トランプをめぐる動きから目が離せなくなりつつある。












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宗教と進化 : 罰する神々が人類成功の秘訣 [海外メディア記事]

 宗教が存在する理由は何か?  それは人間の集団の結束力を創造するからだ、という考え方はだいぶ以前から存在していた。

 しかし、もう一歩掘り下げるならば、その問題は、善行をすれば神がご褒美を与えてくれるからというポジティブな理由が強いのか、それとも、悪業をすれば神が罰を下すからというネガティブな理由が強いのか、という問いに立ち至る。

 この問題に対して、経験的なレベルで答えようとした研究チームの論文が『ネイチャー』誌に掲載されたようだ。その答えは、すべてを見通す神が存在し、その神の罰に対する恐怖心から、人間は道徳的行為をするよう動機づけられている、というものである。


( 私も、「恐れ」が宗教の根底にあるという前提から自著の『レリギオ』を書いたが、こういう具体的な研究が出てきたのは非常に刺激になる。)


 以下は、その研究結果を紹介するドイツ『シュピーゲル』誌の記事である。



Strafende Götter als Erfolgsgeheimnis der Menschheit

Von Frank Patalong. Mittwoch, 10.02.2016 – 20:11 Uhr


http://www.spiegel.de/wissenschaft/mensch/die-angst-vor-goettlicher-strafe-beguenstigte-expansion-frueher-kulturen-a-1076614.html



「 宗教と進化 : 罰する神々が人類成功の秘訣


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 急激に増大する社会的関係の中で生きていける能力を人類に与えたのは何か? それは神罰に対する率直な恐怖心だ、と主張する研究が発表された。神の仕事は、すべてを見通す監視者として始まったというのである。




 神は全能で、至るところに存在し、すべてを知り尽くしすべてを見通す。神は人類を見張り、神が語ったり行うことで重要でないものは何もない。神は善人には手厚い報酬を与え、悪人は容赦なく罰する。神は愛情深い父親だが、雷を落とし復讐し裁きを下す存在でもある。神は天国のイメージで誘惑する反面、永遠の罰で脅するのである。

 つきつめると、以上が、多くの文化が神について抱いてきたイメージの大枠である。人類学者や文化人類学者は、ずっと以前からそこに人類の大きな集団の共存を可能にするメカニズムを発見していた。神々は、至るところに存在し決して眠ることなく、善行や掟が守られているかを監視するという役割を果たしてきた。

同時に、神々は、答えのない問いに答えを提供し、世界とその意味を説明する。遂には、永遠の命を与えることで、死に対する恐怖を和らげてくれる――もちろん、従順な者に対してだけだが。だから、神々は、アメとムチをもって人類に対峙するのである。

 こうした神々に対する深い信念には、一義的なメッセージが伴っている。それは、われわれは皆、監視されている! というメッセージである。だから、人間よ、禁止されていることをしてはならないし、考えてもいけない、なぜなら、お前の頭や心も、神はお見通しなのだから! 


 こうした信念のうちに、権力の獲得・維持の道具を見い出すことは難しいことではない。実際、太古の昔から、聖職者の階級や神権を得た王たちは、宗教から権力を得ていた。それは権力を束ねるものだった。今日に至るまで、国王は自らの地位を「神の恩寵」から引き出している・・・。神を根拠とする権力や支配は、世界のいたるところ、あらゆる文化で見つけることができる。


 しかし、なぜこのような事態に立ち至るのか? そしてそれは何の役にたつのか? なぜなら、このモデルが成功し、もろもろの欲求に応え、宗教をもたない文化には不可能だった文化的事象を可能にしたことは明白だからである。このような問いに答えると称する理論は、昔から存在した。


・ 学者たちは、厳格な規則や法律、およびそれに目を光らせる法廷などに伴う宗教のうちに、家族や氏族や部族の連合体の範囲を超えて共存し協調することを可能にする方法を見る。つまり、宗教は人間の集団的結びつきを創造したのである。


・ より高次の存在に仕えることは(仕える人間たちのうちに)アイデンティティを創り出すように作用するので、無定形だった人間の集団のうちに公益的な行動が生まれるようになる。それに助長されて、古代に芽生えた人類最初の都市文化は、集団的に強固になり繁栄することができた。


・ 複雑な宗教的確信や儀式は、見知らぬ人間たちの間に共通の土台を創り出したし、いまだに創りだしている。それは、文化的・社会的クリップのようなものである。それは、同時に、よそ者を排除するのだが。


・ 宗教は、このように規模が拡大したヴァーチャルな共同体を定義するものである。それにより共同体は、その共通性(「同じ神、同じ法」)に基づいて自己を他の共同体から区別し、一つの共同体として行動し自己主張することができるようになる。


・ 攻撃的な時代の神の使命は、「同じ神をもたない者たち」に対して非人間的で、非道徳な行為を仕掛けることを正当化する。後にキリスト教の神となるヤハウェでさえも、初めは、非常に残忍な部族戦争の神として登場した。ヤハウェを表わすシンボルの一つは、すべてを見通す目である。


 進化論的に考えると、これらはすべて、文化や社会が拡大し生き延びるのに役立つ利点なのである。しかし、学者にとって適切で論理的に思えることであっても、宗教的な人間にとって侮辱となることがしばしばある。そういう人々は、宗教が社会を統一し、慰めと癒しを与える側面を宗教の成功の秘訣として強調するのである。




宗教はアメだったのか―――それともムチだったのか?


 宗教が成功したのは救いを約束したためかそれとも脅しをかけたためかという古くからある問いに、宗教という現象を進化論的に効果的で適応に役立つ利点という観点から探求する国際的な研究が新たな刺激をもたらした(http://nature.com/articles/doi:10.1038/nature16980)。



 その研究結果を「ネイチャー」誌に発表したのは、ベンジャミン・グラント・プルチスキーを中心とする研究者グループだった。研究者たちは、世界中から八つの根本的に異なる文化と、それ以上の数の宗教、一神教のキリスト教や混沌状態のヒンドゥー教の神々から、土着的な自然宗教や先祖崇拝にいたるまでの宗教を選び出した。そして、これまでの研究とは異なり、彼らは答えを宗教の専門書にではなく、それらの宗教を信じている人々のうちに求めた。


 彼らは、インタビューや実験を通して591人を被験者にしたが、そこで彼らは、その人々の宗教の特徴とともに、信仰を同じくする人々や部外者に対する彼らの行動を把握するように努めた。


 実験の際に、彼らは心理学者の経験的な道具を使用した。経済的な競争の枠組みでは、被験者がいかに進んで資源を共有するかをハッキリさせることが問題となった。研究は、利他的行動をどれほど進んで行うかという意欲を、被験者の特定の宗教と関連づけた。その背後にあるのは次の問いである。つまり、自己の利益にならない行動へと動機づけるのはどちらか――神の報酬に対する期待か、それとも、神が下す罰に対する恐怖か?


 彼らが見つけたこと:それは、神がすべてを見通す存在であることと、そこから帰結する罰への恐怖との間に強い相関関係がある、ということだった。

 つまり、道徳的なルールを与えそれに違反した人間には罰を与えると脅かす全能の神によってつねに見られていると被験者が感じるときに、利他的行動を進んでする意欲がはっきりと高まるのである。


 善良で道徳的な行動をすれば報酬がもらえるという期待は、罰に対する恐怖に比べると、動機づけの力としてははるかに弱いものであった。「神意を行為の動機とする」ことは、とりわけ、信仰を同じくする人々、つまり自分の集団のメンバーに対しては、有効に作用した。


 研究チームは、この結果を、すべてを見通す懲罰的な神が拡大する文化の結束力を強めることに対する史上初の経験的証拠であると評価する。そのような宗教モデルがなぜ多大な成功を収めたのかが、進化論的に説明されたのである。共通の信仰心以外に何も共通点がない人々と協調するように動機づけるのは、神罰に対する恐怖なのである。道徳心を説く神々と、超自然的な罰則に対する恐怖が、人類を本当に初めて社会的な存在にしたのである。






」(おわり)







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あなたに架ける橋 (A Bridge Over You) [海外メディア記事]

 ロンドンの南西部にある医療サービス団体(Lewisham and Greenwich NHS Trust)のスタッフのコーラス曲が、昨年のクリスマスの時期に、全英ポップ音楽チャートでジャスティン・ビーバーの曲を抑えて1位となったことは、いち早く『ガーディアン』紙が伝えていたし(http://www.theguardian.com/music/2015/dec/25/justin-bieber-beaten-by-nhs-choir-to-uk-christmas-no-1)、日本でも少しだけニュースになった(http://www.afpbb.com/articles/-/3071512)。


  この医療施設の合唱団については、NHKのBS1で放映された「ギャレス・マローンの職場で歌おう!」を私は見ていたので、「ああ、あのグループか」とすぐにピンと来た。最近になって、そのコーラス曲をYoutubeで見たら、歌も映像もとても良いので紹介しようという気持ちになった。

 「あなたに架ける橋 (A Bridge Over You)」という曲は、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)」と、コールドプレイの「フィクス・ユー(Fix You)」をミックスした作品のようだが、その原詩と訳詩を後に掲げておく。しかし、何はともあれ、Youtubeの映像をご覧ください。「明日にかける橋」の歌詞の内容と病院内の光景がとてもマッチしているのがとくに印象的である。


  「明日にかける橋」は、かつて、人種隔離政策のもとで差別と戦った南アフリカの人々に勇気と希望を与えたことはよく知られているが、現在では、イギリス中の病院で怪我や病気と戦っている人々に勇気と希望を与えているのかと思うと、ひときわ感慨深い。











「    A Bridge Over You

 (http://www.lyricsmania.com/a_bridge_over_you_lyrics_nhs_choir.html


Bridge over troubled water water
Bridge over troubled water water
Bridge over troubled water water
Bridge over troubled water water
Bridge over troubled water water
Bridge over troubled water water


When you're weary, feeling small,
When tears are in your eyes
I will dry them all


I'm on your side
When times get rough
And friends just can't be found
Like a bridge over troubled water
I will lay me down
Like a bridge over troubled water
I will lay me down

And high up above or down below
When you're too in love to let it go
But if you never try you'll never know
Just what you're worth


Lights will guide you home
And ignite your bones
And I will try to fix you


Sail on silver girl
Sail on by
Your time has come to shine
All your dreams are on their way


Sail on silver girl
Sail on by
Your time has come to shine
All your dreams are on their way


See how they shine
If you need a friend
I'm sailing right behind
Like a bridge over troubled water
I will ease your mind
Like a bridge over troubled water
I will ease your mind


Lights will guide you home
Like a bridge
And ignite your bones
And I will try to fix you





あなたに架ける橋


荒波の上に架かる橋
荒波の上に架かる橋
荒波の上に架かる橋
荒波の上に架かる橋
荒波の上に架かる橋
荒波の上に架かる橋



あなたが疲れはて、途方にくれて
涙が目に浮かぶとき
その涙をぬぐってあげる

あなたのそばにいてあげるから
つらくなって、友達が見つからないとき
荒波の上に架かる橋のように
身を投げ出してあげる
荒波の上に架かる橋のように
身を投げ出してあげる


どうにもならない位に好きになったら
気持ちが舞い上がったり沈んだりするけど
でも試しにやってみないと
自分にどれほど値打ちがあるかなんて判らない


いずれ光に導かれて落ち着いて
気持ちに火がついたら
あなたを元気にしてあげよう



出航しよう、白髪の少女よ
出航しよう
輝くときが来た
どんな夢も行く手に広がっているのだから


出航しよう、白髪の少女よ
出航しよう
輝くときが来た
どんな夢も行く手に広がっているのだから



見て、あなたの夢がどんなに輝いているかを
友達が必要ならば
すぐ後ろにいてあげる
荒波の上に架かる橋のように
あなたの気持ちを楽にしてあげる
荒波の上に架かる橋のように
あなたの気持ちを楽にしてあげる


いずれ光が橋のように導いてくれて
気持ちに火がついたら
あなたを元気にしてあげよう
     


         」








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死ぬことを学ぶ [海外メディア記事]

 ニューヨーク・タイムズに載った印象深いエッセイを紹介する。母の死から何を学んだかということがテーマである。著者は女性で、ニューヨークの大学で英語を教えているようだ。いろいろな事が書かれているが、もっとも印象深いのは最後のパラグラフである。それが言わんとしていることは、結局、彼女が母の死を本当に受け入れるのに四年もの月日を必要とした、ということである。



Learning to Die:

By MARGOT MIFFLIN SEPTEMBER 30, 2015 4:15 AM

http://opinionator.blogs.nytimes.com/2015/09/30/learning-to-die/?_r=0







 死ぬことを学ぶ



 母は私に多くのことを教えてくれたが、最後には、そこに、いかに死ぬかということも含まれることになった。

 母の死は順調に進んだ。私の言わんとすることをきっと理解してくれる数少ない友人に、そう私は言った。母は苦しまなかったし、死ぬ前日まで意識はあったし、自宅にいたし、妹と私が一緒だった。それはこの上ない経験であり、多くのことを明らかにしてくれたし意義深いもの ―― 何ものにも換えがたいものだった。もっとも、母の生命と換えられるならば、話は別であるが。


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 死がどれほど控え目に、あるいはどれほど重苦しく、人を捉えるかは誰にも判らない。死は、さざ波のようにやって来る。動いているかと思うと、もう動いていない。母はそこにいて波間に漂っているかと思うと、もう母はそこにいない。死は母を通してあふれ出てくるかと思うと、同時に引き潮のなか母を向こうに連れ去っていく。そんなことが何時間もくりかえされたあげく、ついに母は死の力によって静かに消え去っていった。


  母は、死の直前の一週間、軽い幻覚を見た。モルヒネによって生み出された幻影は、母の死 ―― と、それに続くこと ―― が問題ないことを私に確信させた。「木になれればなあ」と母はある日言った。母は森が好きだったし、骨が徐々に減っていく多発性骨髄腫という母の病気のことを考えると、それはもっともな願いだった。母はもう一度しっかり立ちたかったのだ。立ち上がって根を張りたかったのだ。数日後、母は明るい声でこう言った。「お父さんが待っているわ」。旅立つ準備ができたのである。


 母が死んだ日、息を引き取った後の5分間、あるいは10分間、私は母を腕の中で抱きしめた。母はまだそこにいた。一時間後、母はもういなかった。しかし、母は連れ去られたのではなかった。母は自分で旅立ったと私は確信したし、母が旅立つのを目にして、私だって恐れることなく同じことができるだろうと考える勇気を私はもらった。


 私は夢の中で練習をした。ロゥワー・マンハッタンの建物の屋根づたいに走っていくと、2~30階はある険しい絞首台に行き当たり、私は落下し始めた。死ぬんだなと思ったので、即座に自分に言い聞かせた。第一に、落ち着くこと。地面に激突するまでまだ時間はある。あわてず騒がない限り、死ぬまではすばらしい経験ができるのだから。第二に、きれいに着地し大ごとにならないように、水平の状態を保つこと。第三に、地面にたどりついたら、死ぬ前に、これは事故であって自殺ではないと説明すること。私のことを愛してくれる人々はそのことを知る権利があるのだから。


 私は地上に行き着いたが、再び走っていた ―― ビルをよじ登って、最近買ったばかりの本を置いてきたビルに戻ろうとした。どうしてもその本を取り戻したかったのである。私が死んで行き着いたのは ―― 書店だった。人生は続いていたのである。
 

 母が死んでからの一ヶ月間、母はまだ死の途中にいた。母の手紙を仕分けたり遺品を荷造りするために母のアパートに出向くと、母はそこにいた―― 一週一週と経つごとにその存在感は減っていったが、それでも母はそこにいた。部屋にやってきて、長イスに長々と身を横たえ、ティッシュを準備して、片手を伸ばし床にブラシを掛けたり、コーヒー・テーブルの上に並ぶ大量の雑誌を眺めたりしていた。母は夢に現われることもあった。そのおかげで私は信じられないほど長い間母を抱きしめることができた。母が死んでいることは二人とも知っていたけれども。そうして、数年間、私は母から離れずにいられたが、ただしそれは、私がへまをしなかったときに限られた。たとえば、ある夜、夢の中で、私は母と電話で長話しをしていたが、いまどこにいるのと問いかけると、母はむっとした口調になり、はぐらかすようなことを言ったかと思うと、夢がさめた。だから、私は問いかけることをしなくなった。


 そして、四年が過ぎた。母の死の前に起こったことと死後に起こったことのギャップが広がり、母はそのギャップに入り込んで私のもとに現われてくれたのだ。けれど、母が姿を現すことはなくなってしまった。長イスに座る幽霊の母も、電話口でシラを切る所在不明の母も、撒かれた遺灰が下生えにすっかり定着し、何度も季節がめぐるなか雪や野草の下に埋もれたまま木立の中に不在でありながら気配を長くとどめていたあの存在感も、もうすべてなくなってしまった。でも、私は、考えられないことをした過激で新しい母にようやく出会えたように思えるのである ―― 母は、末期の病気という荒野の奥深くへと旅立ち、私の目の前でまるで魔法にかけられたように姿を変え、そして去っていった裏切り者だった。それは素朴で罪のない裏切り、一つの思い違いの上に成り立つ裏切りだった。私は、母がいつまでも生きていてくれるだろうと単純に思い込んでいたからである。





」(おわり)






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日本南アに勝つ(ラグビーW杯) [海外メディア記事]


 日本人として、スポーツの国際的な試合でこれほど魂が震えるような体験を味わったことがあっただろうか? そう思えるほど素晴しい試合だった。最後に引き分けで終わる選択肢もあった中でトライを狙った場面は最高だった。結果がどうなろうと、私の中で、その選択をした選手たちに対して自然と尊敬の念が湧き上がった。その後のトライと日本の勝利は、私にとって、付け足しにすぎなかった。


 イギリス『ガーディアン』紙は、この試合結果を「日本が南アに勝利したのはラグビーW杯史上最大のショック(Japan beat South Africa in greatest Rugby World Cup shock ever)」と伝えた(http://www.theguardian.com/sport/2015/sep/19/south-africa-japan-rugby-world-cup-2015-match-report)。 


 速報画面の写真をいくつか紹介しよう。


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泣き崩れるローラ・バセット [海外メディア記事]

 2015年7月2日は日本がワールドカップ準決勝でイングランドに勝った日というよりも、イングランドが負けた日として、ローラ・バセットが身動きできなくなるほど泣き崩れた日として記憶されることだろう。その画像が世界中に配信されたが、どれほど多くの人がその画像を見て一緒に泣くことだろう。




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http://www.glamourmagazine.co.uk/news/features/2015/07/02/laura-bassett-womens-world-cup-semi-finale-finals-2015-defeat-own-goal


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http://www.theguardian.com/football/2015/jul/01/womens-world-cup-heartbreaking-own-goal-kills-englands-dreams




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http://www.heraldsun.com.au/news/england-own-goal-video-laura-bassetts-injury-time-goal-sees-japan-into-womens-world-cup-final/story-e6frf7jo-1227424914139



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http://www.itv.com/news/2015-07-02/japan-beat-england-2-1-in-womens-world-cup-semi-final/



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http://www.sportsnet.ca/soccer/fifa-womens-world-cup-japan-england-laura-bassett/



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http://www.itv.com/news/2015-07-02/japan-beat-england-2-1-in-womens-world-cup-semi-final/








 マーク・サンプソン監督の言葉

 「ローラ・バセットは勇気があり力強かったし、この集団を一つにまとめてくれた、あんな結果になるなんてふさわしくない(それほどの活躍をしてくれた)。彼女は英雄として、率先して敵の攻撃を防いだローラ・バセットとして見なされることだろう。 Laura Bassett has been courageous, strong, kept this group together, she didn’t deserve that. She’ll be looked upon as hero, the Laura Bassett who headed and blocked. 」。
http://www.independent.co.uk/sport/football/international/japan-vs-england-match-report-laura-bassetts-cruel-own-goal-sees-lionesses-defeated-in-womens-world-cup-semifinal-10359664.html








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