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アメリカ合衆国は左寄りの国

 遅ればせながら、マイケル・ムーアの『華氏119』を観た。私はマイケル・ムーアという映像作家が好きで、かつて彼の書いたものの翻訳を、ここにアップしたこともある(https://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2011-09-10)。
 

 今回の映画は、トランプの大統領就任の裏側を描いたものとばかり思っていたが、焦点はそこにはなかった。確かにトランプが主役なのかもしれないが、焦点は、いまのアメリカの民主主義がどのようにして駄目になっていったか、という点にあった。


 とりわけ私の興味をひいたのは、政党政治の細かい点は省いて、単刀直入に「真のアメリカ人」とはどういう人間たちか、とマイケル・ムーアが自問してその問いに与えた答えだった。彼の答えは、「アメリカ合衆国は「左派(leftist)」の国、「左寄りのリベラルな国だ」」というものである。彼は次のような数字を挙げている。


・ アメリカ人の71%は妊娠中絶に賛成(NBC NEWS,2018)
・ 82%が男女同一賃金に賛成(YOUGOV,2013)
・ 74%が環境法の強化に賛成(GALLUP, 2018)
・ 61%がマリファナ合法化に賛成(Pew,2018)
・ 61%が最低賃金の引き上げに賛成(National Restaurant Association   Poll, 2018)
・ 70%が国民皆保険に賛成(Reuters,2018)
・ 60%が公立大学の授業料の無償化に賛成(Reuters,2018)
・ 59%が保育の無償化に賛成(Gallup,2016)
・ 62%が労働組合を支持(Gallup,2018)
・ 61%が軍事予算の削減に賛成(University of Maryland,2016)
・ 58%がメガバンクの解体に賛成(Progressive Change     Institute,2015)
・ 78%が銃を一丁も所有していない(Harvard University,2016)
・ 75%が移民はアメリカには良いことと考えている(Gallup,2018)

(おまけ)
・ (とりわけ保守的と考えられている)テキサス州の57%は非-白人で(US  Census,2017)、ヒューストンの市長はレズビアン。


 こういう数字を見るだけで、「アメリカの多数派は左寄りでリベラル」だということははっきりする。しかし、そういう実態が政治に反映することはない。それは、「多数派」の多くが政党政治に希望を抱いておらず、政治に参加しようとしないからである。そして政党の側も、そのような「多数派」に関心を示さない。彼らからは多額の献金が期待できないからである。かつては、民主党がそのような「多数派」の代弁者だったのかもしれないが、ある時期から、共和党に対抗するために、共和党と似たり寄ったりの金権体制を取るようになった(クリントンが大統領になった頃から)。


 結局、真のアメリカ人の考え方を実現しようとする政治家がいなくなってしまった。だからトランプの登場は、ずっと以前から準備されていた、とマイケル・ムーアは言いたいわけである。最後のあたりに登場する、とある識者の言葉が印象的である。「自由の女神の台座には次の言葉が刻まれている。「疲れし者、自由を求める群衆を私にゆだねよ。私は希望の炎を掲げよう」。その炎はどこにあるのだ? この国にはない。心が痛む」。



  (  知らなかったので調べてみたが、自由の女神の台座にある言葉とは、詩人エマ・ラザルスの詩の一節であるようだ(https://en.wikipedia.org/wiki/The_New_Colossus)。訳すと大体次のようになる。

 「疲れてお金もなく、自由な空気を吸いたいと願ってひしめき合う群衆を私に与えよ。
  多くの海岸に打ち寄せられる惨めなごみのような人々を。
  家もなく災難に見舞われた人々を私に与えよ。
  私は黄金のドアのそばで燈火を掲げる」

  
  これは自由を求めてアメリカにやってくる移民のことを謳ったものだ。自由の女神は、移民のために燈火を掲げ、自由の入り口がここにあることを訴えているのである。それに対して、今の政治家は、移民に対して壁を作ろうとしている。なんという違いだろうか。上の言葉は、そのことの嘆きなのである。)





 つまり、今回の映画は、今日のアメリカに対する絶望を表明したものなのだが、ただし、一縷の希望がないわけではない。リベラルの旗手だったバーニー・サンダースの意思を継ごうとするオカシオ・コルテスや、銃規制の運動の先頭に立ち上がった女子高校生のエマ・ゴンザレスが希望の光を掲げているという。


 いまトランプが日本に来ている。きっと、日本のマスコミは、トランプの一挙手一投足を伝えるのだろうが、意味のない茶番だ。そんなことに時間を費やすより、オカシオ・コルテスのことでも調べてみようかな、と思った。  
                           (おわり)







 






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