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遺伝子組み換えをめぐる現状 [海外メディア記事]

  遺伝子組み換え作物をめぐって、注目のレポートが今週出されるようです。そこことを報じたガーディアン紙の記事より。
 
  食糧増産で飢餓問題の根絶を! こうした主張を否定する人はいないでしょうが、問題は増産の手段の是非と、そこに潜む企業の隠然たる支配の増大に対する懸念。こうした構図は、以前となんら変わっていませんが、少し違うのは、イギリスという国が遺伝子組み換えに舵を切ろうとしていること。かなり前に、原発容認に態度を変える科学者の会見を伝える記事を紹介しましたが(http://shin-nikki.blog.so-net.ne.jp/2009-02-23)、あれはあれで政府の動向によって裏打ちされたものだったのでしょう。時代の推移とともに、原発反対から容認にシフトしたように、イギリス社会は遺伝子組み換えでも、それを肯定する方向にシフトしつつあるようです。ただし、それによって、ヨーロッパの一角が、アメリカ資本に飲み込まれてしまうのではないかという不安は、おそらくヨーロッパの多くの人が抱くものでしょう。

 実際、この記事の最後のほうで書かれていますが、アメリカの巨大バイオ企業は、もはや科学的批判を許容しないような独善性に陥りつつあるとか。これでは中世のカトリック教会と変わりません。

 私は、個人的には遺伝子組み換えという技術には反対ではないのですが(実質的には自然に生ずる突然変異と何ら変わらないから)、ただし、その技術の背後にこんな企業が控えているのかと思うと暗澹たる気持ちになります。
 
 (下の写真は、遺伝子的に組み換えられた菜種)


It is too late to shut the door on GM foods.

Felicity Lawrence guardian.co.uk, Friday 16 October 2009 18.26 BST

https://ping.blogmura.com/xmlrpc/22gjm306df1ghttp://blog.with2.net/ping.php/764364/1234712788

oilseed3.jpg


「 遺伝子組み換え作物に門戸を閉ざそうとしてももう手遅れ


 10年前、作物の遺伝子組み換えの話題がはじめてイギリスの国民に知らされたとき、国民は「No」の大合唱で答えたし、政治家や食品業界は遺伝子組み換え作物(以下ではGMと略記)がそれを嫌がる消費者にまで押し付けられることはないだろうと言った。たいていの人に関しては、その状況は今日でもまだ変わっていない。ほとんどの人は自分の口に入るものはGMとは無縁であると思っている。しかし、水曜日に出版される予定の英国学士院のレポートは、GMに関する論争において、きびしい新たな局面の到来を告げるものとなるだろう。そして、一般の人々はGMが私たちの食料供給にいかに深く浸透しているかを知って驚くことになるだろう。


 このレポートの内容については厳しいかん口令が敷かれているが、レポートの著者たち(その多くはバイオ・テクノロジーの研究所で働いている)が次のように主張するのは間違いない。その主張とは、気候変動や水・土地の不足が深刻化しつつある中で世界の増大する人口に食料を行き渡らせる可能性があるように望むならば、疑念は脇においてGMを受け入れる必要がある、というものである。


 政府は、年頭の閣議以降このレポートが出るのを待ち続けてきた。当時、首相、食料にかかわる責任を負う国務大臣、政府主席科学顧問ジョン・ペディントン卿、当時の食品基準局長官デイム・ディアドラ・ハットンが一堂に会してすぐ解決すべきジレンマについて議論した。信頼できる情報筋によると、彼らはGMについての政府の公式見解はもはや支持できないと考えていたらしいのである。


 去年英国に輸入された260万トンのうち、その約3分の2は遺伝子が組み換えられたものだった。その大部分がアメリカ大陸からのもので、動物用の飼料として使われたが、ほとんどの人はそれを知らないままでいる。政府のレポートによると、遺伝子組み換えの大豆油は、ケータリング業界で大量に使われているのである。

 「私たちは偽りの生活を送っているのです」とは、食品産業にたずさわるある長老の役員が、英国政府の関係者との会合で発した言葉である。

 「朝起きて心配することは、遺伝子組み換え不使用を主張しているイギリスの食品チェーン店で高レベルのGMが見つかったのではないかということです」。小売業のトップを行く企業のある幹部はガーディアン紙にそう語った。

 輸入される品種がEUに承認されたものである限り、遺伝子組み換えの大豆の取り引きは完全に合法的である。現在、世界の生産を牛耳っている遺伝子組み換え大豆の品種はモンサント社のラウンドアップ・レディーだが、それもEUの承認を受けたものである。しかし、それよりも新しい品種でEUに認可されていないものもあるのである。認可されていない品種をほんのわずかでも輸入すると、それは違法となるので、業界は認可のプロセスをもっと早めるように圧力をかけてきた。GMが消費者に直接販売されるときは、そのことが明記されているラベルが貼られていなければならない。


 とある高齢の役員が言うには、これほど多くの遺伝子組み換え大豆がわが国に輸入されている以上「英国の店頭で売られている食品が遺伝子組み換えと無縁であるということはますますありそうもないことに見えてきます。個体識別検索システム{生産者や小売業者が、どんな段階のものであれ、大豆の由来を遡っていって、非-遺伝子組み換え作物の種まきにまで辿れるシステム--原著者註}はだんだん難しくなってきており、かくも多くのGMが流入しているので、おそらく、スーパーの棚の食品を検査してみれば、そこにはGMの形跡が見つかるでしょうね。そういう心配は大いにあります」。


 実際、首相によって委任され、内閣府の戦略チームが出したレポートは、2008年夏に、一刻を争う国内問題としてGMに焦点を当てていた。そのレポートによると、「もし遺伝組み換え使用せずと主張している業界でGMが見つかったり、認可されていない品種が英国の食料チェーン店で検出されたならば、英国政府の条例や監督官庁や供給される食品に対する消費者の信頼は大きく損なわれるだろう。認可されていない食材が発見されたならば、回収に関連するコスト改善は多大なものとなるだろう」。


 食品業界や政府にとって都合のよいことには、食料品の遺伝子組み換え検査は、現在ほとんどまったく行われていない。先手を取って危機に対処するために、英国学士院による独立のレポートが、政府の立場を大きく変えるための好機になるだろうと閣議で決められたのである。


 いくつかの省には、人口増加と気候変動のプレッシャーに取り組むためにGMが必要となるだろうという説得工作がなされた。GMの研究が、これからの数十年で直面するだろうとベディントンが警告したグローバルな食料供給を脅かす「暴風(Perfect Storm)」を静めるのに寄与するだろうと、多くの科学者たちも主張し出した。食品基準局もGMについて国民との対話を再開すべきだという主張もなされ――実際先月、消費者の意見についての新たな調査を予告することで、再開に乗り出した。英環境・食糧・農村省(Department for Environment, Food and Rural Affairs(DEFRA)が夏中流した広告も、世界に食料を行き渡らせるうえでGMを新たな至上命題として印象づけ始めた。


 DEFRAの報道官は今日次のように述べた。「私たちはまだそのレポ-トを見ていませんが、それが公表されるのを楽しみにしているし、興味をもって読むでしょう。私たちの最優先課題は、人間の健康と環境を守り、常に科学に従うことです。私たちは、GM作物が、長期的には、幅広い恩恵を提供してくれるだろうことを認識しています」。



 戦う用意はできている

 その一方で、反GMの団体は、この計画が構想された頃からずっと学士院のレポートをめぐって論戦する体勢を整えてきた。開発と環境にかかわる慈善事業をしてきた団体は、去年の10月に公開質問状を出し、学士院に対してグローバルな食糧危機の真の原因を見ていないと非難した。彼らは、新たなレポートがアグリ・ビジネスに支配された「特許テクノロジー」に焦点を当てるならば、限られた価値しかもたないだろうと述べた。彼らはまたGMはなぜ必要なのかとも問いかけた。400人以上の科学者を集め、DEFRAの主席科学顧問のロバート・ワトソンが座長となった国連主宰の4年がかりの再調査がすでに、GMのテクノロジーは世界の飢餓問題に取り組む上で限られた役割しか果たせないだろうと結論づけていたからである。


 ワトソンが主導した再調査によれば、GMのもたらす恩恵(と主張されているもの)についての科学的証拠が示唆するのは、恩恵はまちまちで、ある地域では収穫量が増加するにしても他の地域では減少し、状況が違えば農薬の使用も増えたり減ったりする、というものであった。しかしそれが決定的なこととして結論づけたことは、地球上の飢餓問題は、充分な食料生産にかかわると同様に、権力や食料体制の管理ともかかわるはずである、というものであった。


 ロンドン・シティー大学の食料政策の教授で、持続可能な開発についての政府のアドバイザーでもあるティム・ラングは次のように述べる。「食糧安全保障という巨大な問題に対しては技術的な解決策というものはありません。「人のためになるGM」があるのなら、それには反対しません。しかしGMの問題は、それが導入される仕方にあるのです。それは、何よりもまず、農薬の会社の売上を維持する手段なのですから」。


 商用の種や農芸化学品における企業の権限の集中は前例のないほど高まっていて、カーギル、ADM、バンジといったアメリカに拠点を置く強大な販売企業との連携も前例のないほどになっている。


 ETCという運動団体が収集したデータによると、わずか30年もたたない間に、グローバルな種子市場の82%に知的所有権が適用されたそうである。

 
 特許付き種子では三つの会社が全世界の市場の約半分を支配しているが、その額は年に220億ドル(135億ポンド)にのぼる。2007年、アメリカに拠点を置くモンサントは全世界のマーケットの約4分の1(23%)を占め、それに続いたのはやはりアメリカの企業のデュポン(15%)、スイスに本社を置くシンジェンタだった(9%)。
  

 たった6つの会社――上に挙げた三つの会社に加えて、バイエルン、BASFそしてダウ・アグロサイエンス――が農芸化学のグローバル市場の4分の3を支配しているのである。最近までそれらの企業は相互に容赦のない訴訟合戦を繰りひろげていた――デュポンは今でも、モンサントがアメリカで違法な独占を仕掛けていると主張しているが、この疑惑はモンサントは否認しているが、大豆の種子の価格高騰の件と並んでアメリカの司法省が調査中である。しかし、もっと最近のトレンドは戦略的な同盟関係を形成することになってきた。たとえば、2007年、モンサントとシンジェンタは知的所有権をめぐる相互に対する訴訟を取り下げ、見返り特許権を認めたのである。


 サート・アイディー社(Cert-ID)の主任研究員ジョン・フェイガンにとって、こうした企業の集中とグローバル規模での取引の現実が、英国政府のGMに関するジレンマの核心にあるのだという。フェイガンは、このジレンマは真のジレンマではないと思っている。彼の会社は、ブラジルからヨーロッパに輸入される非-組み換え大豆の認定企業としては全米トップを走っているが、非-組み換え作物の連鎖状になっている供給路は難しすぎて維持できないという考え方は「ゴミ」だ、と彼は言う。ブラジルは、イギリスを維持できる十二分の非GM大豆をもっており、食品業界や農業生産者やイギリスの各省の不安にもかかわらず、各種の食糧を分離しておくだけの資金が得られる限り、非GMの作物を栽培し続けるだろう。


 「アメリカの巨大な農産物販売会社のカーギル、ADM、バンジなどは、バイオ種子に関する彼ら独自の大きな研究計画をもっています」と、フェイガンは言う。「そうした会社は、モンサントやシンジェンタと深い結びつきをもっています。それらの会社は、アメリカのGMの大豆がヨーロッパで批判を受けることなく受け入れられるのを望んでいて、地球上のどの大豆をとっても、他のどんな大豆とも変わらず等しくなることを望んでいるのです。収益性のある商品の販売とはそういうことでしょうからね」。


 アグリ企業が、実際には潜在的利点を広げるかもしれないGMの研究を制限していることには、科学者の間にも不安が広がっている。「サイエンティフィック・アメリカン(Scientific American )」誌の編集記事は、最近、「遺伝子組み換え作物が宣伝されているような収量があるということを実証することは不可能」であると不平を述べた。


 「アグリ技術の企業は、独立した研究者の業績を拒否する権限を自らに与えてしまった。訴訟の脅威にさらされるので、科学者は各種の種子を比較することはできないし…、作物が思ってもみない環境への影響を生み出さないかどうかを調査することもできない…種子会社が是認した研究だけが日の目を見るのが現状である」とその記事は述べた。


 英国学士院のレポートは、進んで暴風の中へと歩き出していくようなものだろう。」。









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