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なぜ泣くのか? [海外メディア記事]

 久しぶりに『シュピーゲル』誌の科学記事から。涙の存在理由についてですが、最後のところまで訳して初めて気がついたことは、この紹介記事は、攻撃性の説明がないし、進化論的な意味合いも述べられていないので、紹介記事としても中途半端だな~ということ。

 しかしその点は措くとしても、ここで述べられていることは、考え方としてはずいぶん以前から存在していた考えです。涙というか、感情一般の戦略的(政治的)性質についてはかのサルトル(『情動論粗描』)や、この記事でも触れられているテキサス大学にいたソロモンという哲学者などがずいぶん喧伝した考え方です。それを「進化心理学」という新たな衣装(意匠?)に包み換えて表現しなおしただけでは? という疑念を私はもちます。

http://www.spiegel.de/fotostrecke/fotostrecke-46016.html
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「 私たちはなぜ泣くのか
 うれし涙、悲しみあるいは怒り:なぜ泣くのか、その情動的な理由はさまざまだが、進化論的理由ははっきりしていない。イスラエルの研究者は、目に浮かぶ液体の膜が泣く人の本当の意図をおおいかくす――そしてそれによって相手の攻撃性を弱めると推測する。

 涙が目からこぼれ落ちるとき、泣く人が悲しんでいるとは限らない。その人はうれしいのかもしれないし、怒っているのかもしれないし、痛みに苦しんでいるのかもしれないし、哀れんでいるのかもしれないし、感動していたり、無力感を味わっていたり不当に扱われたと感じているかもしれない。涙を誘発する感情は多種多様であり、人それぞれでもある。しかし涙そのものの意味は今でもはっきりしていない。イスラエルのテルアヴィヴ大学のとある進化生物学者が、なぜ私たちが泣くのかについての新たな説明の試みを発表した。その学者は、涙が屈服や服従の合図だと想定しているのである。

 涙は、ストレスや悲しみ、苦痛や怒りによって生じた化学物質を体内から放出することに役立つということを出発点にする研究者もいる。たとえば赤ん坊が泣くのは周囲の人に苦痛に対して注意を促すためだ、と想定する研究者もいる。相手が涙を流すと、統計で計測できるほどはっきり、知覚された感情が強められることを示した研究もある。つまり、ある人が悲しいという感情をただ単に伝えるだけでは、それに加えてその人が泣いてしまう場合ほど強い感情を会話の相手のうちに呼び起こさないらしい。したがって、涙は周囲の人に対する合図として理解されうる、というのである。

 
 涙によって同情と理解を


 進化生物学者のオーレン・ハッソンはこの理論をさらに追求した。彼が専門誌『進化心理学(Evolutionary Psychology)』に寄稿した論文で、泣くことは、自分と他の人間との結びつきをより強くすることに役立つものだろうと書いている。泣くことは、自分が傷ついていて助けを求めていることを知らせるものなのだという。このことは色々な状況で有利に働く。攻撃してくる者に対する不安から泣く人は同情を誘うだろうし、ある集団にいて涙を流す人は、その集団の別のメンバーの理解や援助を引き出すだろう。

 ハッソンによれば、こうしたメカニズムは、とりわけ目に生ずる直接的変化によって説明できるという。「目が赤くなるとともに生ずる液体の膜のおかげで、見る人は、泣く人のまなざしがどこを向いていてどのように動いているか、見極めるのが困難になる」と、ハッソンは専門誌に書いている。「大泣きすると、そこにどんな意図があるのかについての情報が伝わらない結果になり、相手もどうしていいか判らなくなってしまうことがある」。

 研究者の中心的理論は、泣く人は、会話の相手の攻撃的振る舞いを阻止して、その人と自分との結びつきをもっと緊密にしようとする、ということである。オースチンのテキサス大学の進化生物学者デイヴィッド・バースは、この研究に関与してはいなかったが、ハッソンの説明モデルをとても説得力のあるものと見なしている。アメリカの科学普及団体「ライブサイエンス(Livescience)」はバースの言葉を引用して、「涙が他の人間の行動を抑止するように働くことということは、「非常にオリジナルな考え方」である」と述べている」。









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