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狂気と創造性 [海外メディア記事]

 狂気と創造性との関連というと、昔から研究対象になっていたし、あまり今では顧みられないテーマであるように思っていましたが、この記事を読むと、まだ追求するに値すると思われているようです。この研究自体は、まだそれなりの結果にはいたっていない訳ですが、こうした分野は、個人的にはとても興味を持っており、できれば引き続き注目していきたい、と思っています。『ニュー・サイエンティスト』という科学誌の記事です。 

 
 
16 July 2009 by Ewen Callaway, in NewScientist

http://www.newscientist.com/article/dn17474-artistic-tendencies-linked-to-schizophrenia-gene.html?DCMP=OTC-rss&nsref=online-news


「 芸術の素質は「統合失調症遺伝子」に関係あり



 苦悩する芸術家というステレオタイプはみんな知っていることだ。サルバドール・ダリの様々な障害や、シルビア・プラスの鬱病を思い浮かべる人もいるだろう。さて、新たな研究がその理由を示してくれたようだ。精神病や統合失調症に関連づけられている遺伝子変異体が創造性にも影響を及ぼしているというのである。

 この発見は、統合失調症や双極性症候群のような精神病を発現させるリスクを増やす変異体が、人間の進化の過程でなぜ保存され、それどころか優遇されてきたのか、その理由を説明することに貢献するだろうと、この研究を行ったハンガリーのブダペストにあるセンメルワイス大学のサボルチュ・ケリ博士は言う。

 ケリ博士は、これまでの研究でも統合失調症のリスクを若干高めるのではないかと考えられてきたニューレグリン1(neuregulin 1)と呼ばれる脳の発達にかかわる遺伝子を調べた。脳の中でどれほど多くのニューレグリン1タンパクが作られるかに影響を及ぼすDNAのたった一文字の突然変異が、精神病や記憶障害や批判過敏症に関連づけられた。

 健康なヨーロッパ人の約50%はこの変異体を1部だけ持っているが、15%は2部所有している。


  創造的思考
 
 こうした変異体が創造性にどのような影響を及ぼすかを見きわめるために、ケリ博士は、創造的で一芸をもつボランティアを募集する広告に応募した200人の成人に対して遺伝子解析を行った。彼はまた、ボランティアに、創造的思考を見る二つのテストを行い、特許を出願したり本を書くといった創造的な仕事に関して客観的に採点する方法を考案した。

 ニューレグリン1変異体を2部もつ人――この研究の参加者の約12%――は、変異体を1部か全然もっていない他のボランティアに比べて、創造性という点では、目だって高い得点をとる傾向があった。変異体を1部もつ人々は、変異体をもたない人よりも、平均して創造性に富んでいるといると判定された。全体的に見て、この変異体によって、創造性の違いの3%から8%までが説明できるとケリ博士は言う。
 
 ニューレグリン1が創造性にどのような影響を及ぼすかは、明らかではない。変異体を2部もっているボランティアは、そうでない人と同様、パラノイア、奇妙な口癖、不適切な感情といったいわゆる分裂気質の特徴を所有しているようには見えなかった。このことは、この変異が精神病と結びついているからといって、この変異と創造性との結びつきが説明されるわけでは必ずしもないことを示唆している、とケリ博士は言う。

 
 脳を鈍磨させる

 この変異体は、むしろ、前頭葉皮質と呼ばれ、気分や行動を制御する脳の部位を鈍磨させるのではないかとケリ博士は見ている。この変化が、ある人においては創造的なポテンシャルを、別の人々においては精神病的な障害を解き放つのではないかというのである。

ニューレグリン1の変異が創造性を高めるのか、それとも精神病に寄与するかを決定する一つの要因は知性であるらしい。ケリ博士のボタンティアたちは平均よりも頭がよい傾向にあった。逆に、統合失調症の歴史をもつ家族についての別の研究の発見によると、同じ変異は低い知性と精神病の徴候に結びつけられていた。

 「私の臨床経験から判断すると、精神病に罹患しながら高いIQをもつ人は、精神病的経験に対処する知的能力をより多くもっていると言えます」とケリ博士は言う。「そうした{精神病の徴候に伴う――訳者註}感じを経験するだけでは充分ではなく、それを人に伝えなければならないのです{高いIQを持つ人は、伝達することで何とか精神病的経験に対処している、ということを言いたいのか?――訳者コメント}」。

知性の影響

  ニューレグリン1の変異と精神病との関連を発見したイギリス・エジンバラ大学の遺伝学者ジェレミー・ホールは、遺伝子の作用が、知性のような認知的要因によって影響を及ぼされることに同意している。

 だからといって、そのこは精神病と創造性が同じものであるということを意味するわけではない。「狂気と天才が同じコインの両面であるというややロマンティックな考え方はいつの世にもありました。その考えはどれくらい正しいかですって? 狂気が狂気にすぎないことはしばしばですし、知性との遺伝的な結びつきをそれほどもっているわけでもありませんからね」とホール博士は言う。

 カナダの、ブリティッシュ・コロンビア州、バーナビーにあるサイモン・フレーザー大学の行動遺伝学者バーナード・クレプシ博士は、今はまだこの研究に対しては賞賛を控えている。「これは、かなり重大な結果を伴うとても興味深い研究ですが、この結果が信頼とともに受け入れられるには、研究者との関連のない地域で同種の研究が繰り返されなければならないでしょう」と彼は言う」。
 









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