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ローマへ (ラテラノ洗礼堂 -- 準備編その2)

  まずは、いわゆる「ラテラノ・コンプレックス」と呼ばれる建物群の中から次のものに注目。

  ラテラノ洗礼堂(英語:San Giovanni in Fonte)。


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 今回、ローマの古い建造物や遺構を紹介するにあたって、主に参考にしたのはマチルダ・ウェッブ著『初期キリスト教時代のローマの教会とカタコンベ(MATILDA WEBB: THE CHURCHES AND CATACOMBS OF EARLY CRISTIAN ROME)』。それによると、


 ラテラノ洗礼堂は、4世紀後半にいたるまでローマにある唯一の洗礼堂だった。(しかし、キリスト教公認前に、大ぴらに洗礼などできたのだろうか? たぶんそんなことはないと思うのだが、ここら辺は不明としておくほかはない)。 国教化以降は、その他の洗礼施設もできて洗礼も年に一度のイースターの祭日に限定されなくなったという。

 この洗礼堂ができる前には浴場だったそうだ。やはり、水(あるいはお湯?)が湧き出る場所だったのだろう。

 元来、洗礼は、それまでの人生を捨てて、キリスト教徒として再生を果たす儀礼である。洗礼盤は新たに生まれかわる場所であるから、それは、一種の子宮として、それを満たす水は羊水として考えられる余地がある。実際、チュニジアには女性の子宮を模した洗礼盤があったようだが、ラテラノの洗礼盤はどうだろうか? 


 洗礼堂の中でもひときわ目立つ八角形の台輪には二行連句が刻まれている。 のちに教皇レオ1世となるセクストゥス3世の助祭長の作とされる。原文はもちろんラテン語だが、英語の訳と日本語の私訳を以下に示そう。洗礼という儀式がどういうものであるか、ということがうまく表現されている。



Here is born a people of noble race, destined for Heaven,
whom the Spirit brings forth in the waters he has made fruitful.
Mother Church conceives her offspring by the breath of God,
and bears them virginally in this water.
Hope for the Kingdom of Heaven, you who are reborn in this font.
Eternal life does not await those who are only born once.
This is the spring of life that waters the whole world,
Taking its origin from the Wounds of Christ.
Sinner, to be purified, go down into the holy water.
It receives the unregenerate and brings him forth a new man.
If you wish to be made innocent, be cleansed in this pool,
whether you are weighed down by original sin or your own.
There is no barrier between those who are reborn and made one
by the one font, the one Spirit, and the one faith.
Let neither the number nor the kind of their sins terrify anyone;
Once reborn in this water, they will be holy.




ここで天に召される定めの高貴な一族の人間が生まれる
霊が、実りあらしめた水の中で、その人間を生み出す。

母なる教会は、神の息により、子孫を宿し
処女のままに、この水の中で出産する。

天の王国を望め、この洗礼盤で再生する者よ、
永遠の生は、出産を一度しか経験しない者を、待ってはいない

これは、全世界を浸し、
キリストの傷に由来する生命の泉。

罪ある者よ、浄められるために、聖なる水の中に下りよ、
それは罪深い者を受け入れ、その者を新たな人間にする。

罪のない者にしてほしいなら、この盤で清められよ、
汝を押しひしぐものが原罪であろうと汝の罪であろうと。

再生する者と、一つの洗礼盤、一つの霊、一つの信仰によって一体となった者たちの間には
いかなる隔たりもない。

罪の数や種類によって恐れを抱くことがないように、
この水の中で再生すれば、その者は聖なる存在となる。







(つづく)
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