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ホームレスの若者が増えているアメリカ(1) [海外メディア記事]

 アメリカは不況を脱出しつつあるようだが、底辺の人々に対する不況のしわ寄せは収まっていない。それどころか、ホームレスの若者が増加中であるという。それを取材した『ニューヨーク・タイムズ』紙の記事を2回に分けて紹介する。(元記事のところに行けば動画を見ることもできる)。


 日本でもブラック企業に使い捨てられる若者が話題になっているが、未来ある若者に容赦ないしわ寄せを及ぼす今の状況はきっとひどい影響を未来に及ぼすにちがいないのである。
 


After Recession, More Young Adults Are Living on Street

By SUSAN SAULNY
Published: December 18, 2012


http://www.nytimes.com/2012/12/19/us/since-recession-more-young-americans-are-homeless.html




  不況の後で、路上で暮らす若者が増加中(1)



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若くしてホームレス: 不況の結果として多くの若者がホームレスに苦しんでいる




  レイオフの波が押し寄せて職を失ったときデュアン・テイラーはコミュニティ·カレッジで人文科学を学び自宅で暮らしていた。それから彼は第二の職を見つけ失った。そして第三の職を見つけ失った。

 いまテイラー氏(24)は、「生活水準を落として」レストランJack in the Boxでどうにか新たな職を手にいれたが、アパートを借りたりシェアできるほどの稼ぎはない。彼は、妹が自分のソファで寝てもいいと言ってくれる時以外は、ホームレスの収容施設のマットで寝ている。


 「いつ何時でも職を失うことはありうるし、それとともに僕の安全もなくなってしまうんだ」とテイラー氏は言い、いつも彼が最後に雇われ最初に首になったいきさつを説明してくれた。「僕は自活したいんだ。それが僕の唯一の目標なんだ」。


 全国で、何万という不完全雇用や無職の若者、しかもその多くが大学履修単位や職歴をもっている若者が、不況の影響の中で住む家を求めて苦しんでいる。不況は18歳から24歳の労働者にすべての成人の中で最高の失業率を残した。

 
 実家に戻って両親と一緒に住む人々――いわゆるブーメラン組――はまだ運がいい方だ。しかしそれは、家族が不況の打撃を受けた人々にはないオプションで、母親がコインランドリーで働きながらかろうじて生活しているテイラー氏もその一人だ。そんな人々は、一定の住所がないので、この一時的な苦境(となることを彼らは願っている)の中で公的にホームレスという長く残る汚名を着せられないようにと願って、知り合いの家を転々と泊まり歩いたり、車や別の私的な場所で隠れるようにして眠ったりする捉えがたいグループを形成している。



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アンナ・ワイリーは、両親も貧窮状態にあるので家に帰らず、シアトルにある若者向け収容施設の「ルーツ(Roots)」で夜を過ごしたと語った。




 こうした若者はわが国のホームレス人口の新顔であるが、貧困問題の専門家やケースワーカーによればその人口は増大中なのだそうだ。しかしこの問題はほとんど誰からも注目されていない。ほとんどの市や州は、ホームレスの家族に焦点を当てており、ホームレスの若者を特定する特別の努力を払ってこなかった。若者は、年配で慢性的にホームレスの人々から被害を受けるのではないかという恐れから、通常の収容施設を敬遠する傾向があるのだ。大学に行く余裕がない若者の失業率と数は、その年齢層の「ホームレスが劇的に増加していることを物語っている」と、「ホームレス問題に関する全米省庁間協議会(U.S. Interagency Council on Homelessness)」のエグゼクティブ・ディレクターであるバーバラ・ポップ(Barbara Poppe)は語った。



 オバマ政権は、九つのコミュニティー(そのほとんどが大都市)とともに、18歳から24歳で一定の住所をもたない若者を探し出すプロジェクトを始めた。その努力に含まれる都市には、ニューヨーク、ヒューストン、ロサンゼルス、クリーブランド、ボストンが含まれる。


 「私たちの最初のアプローチの一つは、もっと信頼できるデータを得ることです」とポップ女史は語った。


 多くの都市で貧しい人々にサービスを提供している人々は、景気が回復したからといってこの問題は改善されていないと言う。「何年も前は、大学に通っているような人が、自分はホームレスだから福祉職員に何とかしてもらいたいと思って座って待っているなんて思いもよりませんでしたよ」と語るのは、フロリダ州の最大の慈善団体の一つである「コミュニティ・フード・アンド・アウトリーチ・センター(the Community Food and Outreach Center)」のセンター長であるアンドレ・ベイリー。「今ではそんなことは普通のことです」。



 ロサンゼルスが路上生活をしている若者を最初にカウントし始めたのは2011年だった。その時の数字は3600人だったが、市の収容施設のキャパシティーはその17%をカバーするにすぎなかった。

 
 「それ以外の人々は自分でやりくりするしかないのです」と語るのは、ロサンゼルス市ホームレス・サービス機構(Los Angeles Homeless Services Authority)の所長であるマイケル・アーノルド。「友人宅を転々と泊まり歩いている人々を加えれば、その数はもっとずっと高くなります」。


 ボストンも2010年と2011年にカウントを試みた。収容施設を求める若者のホームレス人口は、その期間で、施設を利用した6000人のホームレスの3%から12%に増大した。

 
 
 「これは氷山の一角にすぎないと知ることが重要な一歩となります」と語るのは、ボストン市公共保健委員会の緊急収容施設の所長であるジム・グリーン。


 ワシントンでは、ジャーナリズムの学位を持つ26歳のランス・ファラーが、解雇された後もう家賃が払えないワンルームのアパートの荷造りをしながら先月の終りを過ごしていた。ファラー氏は、2010年にフロリダ大学を卒業した後、8ヶ月間にわたって職にとどまることができなかったと述べた。


 「ありがたいことに、再び僕が自活できるまで家に泊めてくれるガールフレンドがいるんです」と、『失われた世代の声(http://lrfuller.wordpress.com/)』というブログを書いているファラー氏は言った。「僕の世代の人々がこの不景気に完全に打ち負かされたと感じないのは本当に難しいですね」。


 シアトルのファーストフードで働いているテイラー氏は、若者のための収容施設で教会の地下にある「ルーツ(Roots)」に、念願のスペースを見つけられたときは幸運だったと感じた。このような施設は稀なのである。



 何世代にもわたって、ホームレスのためのサービスは、まだ扶養される年齢にある子供と老人という二つのグループのためのものだった。 専門家が「過渡期の青年」と呼ぶ人々への関心は乏しかった。その青年たちの欲求は子供や老人とは違っているのだ。


 「彼らが来る日も来る日もここに戻ってくる様子を見ています、一日ごとに敗北感が増し、疲労の色が深くなり、「いつになったらおれの出番が来るんだ?」と思いながら戻ってくる様子をね」と語るのは、「ルーツ」のエグゼクティブ・ディレクターであるクリスティーヌ・カニンガム。「胸が痛くなりますよ。自分には価値があることを世間に向かって誇示したい年齢なのに」。



 彼らが身分の安定した大人に移行するにはきれいな服や収容施設以上のものが必要だと専門家は言う。「彼らが望んでいるのは出口です」とポップ女史は言う。彼女の協議会は、どんなプログラムや支援が最も有効かに関するデータを収集している。「彼らは長期的に市場で買い手がつくようなスキルを積み上げる機会を望んでいるのです」。


 「もっと個人個人に合わせたアプローチのほうがうまくいくようです」と彼女は付け加えた。


」(つづく)


















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