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夢には意味がある [海外メディア記事]

 メンタル・ヘルス的な話題が続きますが、今日は夢について。脳研究の進歩によって、かつての夢判断的な解釈は全面的に否定されてしまった感がありましたが、最近になって、また「夢には意味がある」という方向を向いた研究が進んでいるようです。もちろんフロイト的なものではありませんが。『タイム』誌の記事です。


By Tiffany Sharples Monday, Jun. 15, 2009

http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1904561,00.html

 「願望充足? いやそうではない。しかし夢は確かに意味をもっている


  夢は、1889年にジグムント・フロイトが最初に想定したように、無意識の充たされない欲求に通じる秘密の窓ではないにしても、ますます増える証拠によって、夢が――睡眠はもっとそうである――人間の感情の処理に密接に結びついているということが示されているのだという。

 シアトルで行われた睡眠協会連合の年次総会で先週発表された新たな研究によると、しっかり睡眠をとっていると、覚醒時に複雑な感情を適切に理解するわれわれの能力もしっかりしたものなるらしい。「睡眠は、本質的にいって、感情の羅針盤が示す磁気北位をリセットしているのです」。そう語るのは、カリフォルニア大学バークレー校の「睡眠と神経画像研究室」の室長マシュー・ウォーカー。


 ウォーカーと共同研究者による最近の研究は、睡眠――とくに急速眼球運動睡眠(レム睡眠rapid eye movement (REM)sleep )――が他人の顔に表われる感情を読み取る能力にどれほど影響を及ぼすかということを調べた。36人の成人を対象にした小さな実験で、実験参加者は、昼間60分または90分の昼寝をしたりまったく昼寝をとらないまま、写真に写った人の表情を言い当てるように求められた。昼寝の間レム睡眠(そこで夢が非常にしばしば生ずる)に達した参加者は、レム睡眠に達しなかったりまったく昼寝をしなかった参加者に比べて、他人の表情のうちに、幸福といったポジティヴな感情が表われていることをより良く見極められた。レム睡眠に達しなかったり昼寝をとらなかった参加者は、怒りや心配を含むネガティヴな表情の方により敏感だった。

 
 医学雑誌『カレント・バイオロジー(Current Biology)』に発表された、ウォーカーと共同研究者がハーバード・メディカル・スクールで行った過去の研究でも、睡眠を奪われた人々において、前頭葉――感情をコントロールすることに関わる脳の領野――の活動が著しく低減していることが判明した。ウォーカーは、似たような反応は、程度は劣るが、昼寝を奪われた参加者にも生じており、このことは進化に原因があるのだろうと示唆する。「ジャングルを歩いていて疲れを感じるとき、ネガティヴな事柄に過度に敏感になる方が有利になるでしょう」と彼は言う。つまり、余分な心的エネルギーがない状態では、身近で起こりそうなもっとも悪いことの方に感情を同調させようとする、ということである。逆に、充分睡眠をとっていると、ポジティヴな感情の方により敏感になり、そのことが長期的なサバイバルには有利となるでしょう、とウォーカーは示唆する。


 わたしたちの日常生活は、「社会での相互作用を理解したり、他人の感情のあり方を理解したり、他人顔に浮かぶ表情を理解する」能力に多大な影響を受けます。そう語るのは、ウォーカーの研究室の上級研究員で、最近出版のために提出された研究所の主執筆者のニナード・グジャール。「そうした能力は、私たちの一個人としての、または一職業人としての生活を導いている最も根本的なプロセスなのです」。


 レム睡眠は、他人の内にあるポジティヴな感情を見極める能力を向上させるだけではないようである。それはまた、私たち自身の感情の経験のとがった角を穏やかなものにするのかもしれない。ウォーカーが示唆しているところによると、レム睡眠の――特に夢の――機能は、脳がその日の出来事を
ふるいにかけて、それに付着しているネガティヴな感情を処理し、それを記憶から引きはがすようにさせることだという。彼はそのプロセスを夜に焚く「鎮静効果のある香油」の使用になぞらえる。レム睡眠は「生きていくことで与えられるとげとげしい感情的なあれこれを改良しようと試みているのです」と彼は言う。


 「それは忘れたことではありません。忘れてはいないのです。それは、ある感情的出来事の記憶ですが、それ自体はもう感情的なものではないのです」と彼は言う。


 睡眠がもつこの一時的な安全弁のような特質は、私たちがレム睡眠に達しなかったり、レム睡眠が妨げられたりするとき、機能しなくなるかもしれない。「もし感情が取り除けなかったら、絶えず続く不安の状態がそこから生ずるのです」と彼は言う。


 この理論は、睡眠と自殺念慮や行動の関係を専攻し今週の睡眠会議で研究発表したフロリダ州立大学臨床心理学の博士課程進学予定者のレベッカ・バーネットが行った新たな研究とも矛盾しない。

 精神病理学上の緊急診断のために精神科に入院した18歳から66歳までの82名の男女を対象にした研究で、甚だしく頻繁に生ずる悪夢や不眠の存在が自殺念慮や行動の強力な前触れであることを彼女は発見した。研究に参加した半分以上の人が、過去に少なくとも一回は自殺を試みたことがあり、前月に自殺を試みた研究グループの17パーセントは、そうでない人々に比べ、悪夢の頻度や強度において劇的なまでに高い得点を得た。バーネットの発見によると、研究者がウツのような他の要因の対照実験したときでも、悪夢ないし不眠と自殺との関係は依然として続いたのである。



 過去の研究からも、慢性的な睡眠障害と自殺のつながりは立証されていた。悪夢、不眠、その他の睡眠障害を含む睡眠の病気は、現在の薬物乱用・精神衛生管理庁が掲げる自殺予防危険信号の一覧にも並んでいる。しかし、バーネットの研究を際立たせているのは、悪夢と不眠が別個に診断された場合、悪夢はそれだけで自殺の行動の前兆になるものであることを示したからである。「悪夢は自殺の兆候を示す他に類のないリスクを表わしているのかもしれませんし、このことは、私たちが夢の中で感情をどのように処理しているかという点と関係があるのかもしれません」と彼女は言う。


 もしそうならば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような精神病理的な症状を特徴づける再三にわたって発生する悪夢を説明するのに役立つかもしれない、とウォーカーは言う。「脳は、その経験の記憶から感情的な外皮を剥ぎ取れなかったのです。だから翌日になって、脳は同じことをしてはまた失敗し、壊れたレコードのようなことになるのです。PTSDの患者が訴えていることは、「私はこの出来事を乗り越えられません」と聞こえるのです」。


 ウォーカーの説明によると、生物学的レベルでは「感情的外皮」は、睡眠中、交感神経系の活動に翻訳される。つまり心拍数が高くなりストレスを生み出す化学物質が分泌される。なぜ悪夢が再発したり、どうしてレム睡眠が感情の処理を促進するのか――もしくは、悪夢が取って代わり肉体的なストレス症状を永続化するときは、レム睡眠は感情の処理を妨げてしまうのはどうしてか―――を理解することは、結局、苦痛に満ちた精神障害の効果的な治療の手がかりを与えてくれるかもしれない。おそらくは、たんに睡眠の習慣をとりあげるだけで、医者は、自殺にいたる感情のサイクルを遮断することができるのかもしれない。「自殺を予防するチャンスがここにあるのです」とバーネットは言う。


 こうした新しい研究が強調するのは、研究者たちが精神の障害と睡眠の障害との間の双方向の関係としてますます認識しつつあることである。「現代の医学と精神病理学は、心理的障害には睡眠の問題が同時発生的についてまわっていて、心理的障害が睡眠の問題を永続化させていると一貫して考えてきました」とウォーカーは言う。「しかし実は、睡眠の障害が精神病理的な障害に寄与しているということも考えられるのではないでしょうか? 」」。







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