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戦争と利他主義 [海外メディア記事]

 戦争は利他主義を生み、利他主義的考えを持ったメンバーをより多くもつ集団が、進化のサバイバルゲームで生き残っていく…

 集団選択の考え方は古くからあります。利己的遺伝子説によって一旦は完全に息の根を止められてしまったように見えましたが、80年代後半からまたリバイバル傾向にあります(実は、理論的にどっちが正しいかどうかという論争はもうあまり意味がないはず。そういう意味で、この記事の記者はすこし遅れていると感じますね)。

 さほど考えなくともわかるように、狩猟採取民として人類がすごした年月に比べると、農耕が始まって以降の時間は微々たるものなので、狩猟民としてすごしたときに人間が得た特性にもう少し焦点を当てなければならないと常々思ってきたので(かつて、ブルケルトについて書いたことを参照されたい)、こういう研究が出てくるのは個人的に喜ばしいし、自分でも読んでみたいと思います。
 
 『インディペンデント』紙の記事です。
http://www.independent.co.uk/news/science/war-what-is-it-good-for-it-made-us-less-selfish-1697321.html

「 戦争、それは何のためになるのか? それはわれわれを利己的でないようにしたのである

 争いに満ちた20万年という歳月の間に利他主義がいかに発展したのかを科学者が説明する。
 人間であることを特徴づけるものの一つに、集団のために自分の生命をなげうつ個人的犠牲という崇高な行為があるが―そのような利他主義がダーウィン的進化の結果としてわれわれの遺伝子に組み込まれたということはありうるだろうか? 

 生物学者たちはここ何十年もの間、利他主義の進化について論じてきたが、似たような遺伝子を共有する血縁上の近親者のサバイバルを手助けすることに直接関わる行為を除けば、ダーウィン流の自然選択は崇高な個人的犠牲の行為を説明することはできないという結論に、生物学者はとうの昔にたどり着いていた。

 しかし、いま、ある研究が示唆するところによると、先史時代の人間社会の利他主義は、結局、狩猟採取者の競合する部族間のほとんど絶えることのない戦争状態によって引き起こされた一種の自然選択に由来したとのことだが、これはダーウィン自身が1873年の書物『人間の由来』で初めて示唆した考え方でもあった。


 ある科学者の示唆によると、人類の歴史の20万年という歳月の大部分は、一万年足らず前の農業の発明に先立つ狩猟-採集の局面であったのだから、進化の歴史におけるこの長い期間がわれわれの社会的行動を形作ったことになる。おまけに、その科学者によれば、個人の犠牲的行為こそ、ある集団が他の集団に対して勝利を収めることを可能にする鍵だったのだから、利他主義は部族間の戦争の結果として直接進化したのかもしれないのである。

 ニュー・メキシコ州のサンタ・フェ・インスティチュートのサムエル・ボウレスは次のように言う。「戦争は十分一般的で、私たちの祖先に死をもたらすものだったので、私がローカルな利他主義と呼ぶもの、つまり、集団のメンバーに対しては協力的だが外部の人間には敵対的である傾向のことですが、そういう利他主義の進化に有利に働いたのです」。

 「遺伝的な近親者に対する援助を除けば、利他的に振舞う―自分を犠牲してでも他人を手助けする―遺伝的傾向が進化しうるということを生物学者や経済学者は疑ってきました」。

 『サイエンス』誌に掲載された彼の研究で、ボウレス博士は、自然選択は、単なる個人に対してというよりも、相互に共同する人々の集団に対して作用を及ぼすと提案することによって、人間の進化についての利己的遺伝子説の論者たちに論戦を挑んでいる。

 石器時代の考古学的データや、もっと最近の狩猟-採取者の部族の民族誌的研究に依拠しながら、ボウレス博士は利他主義がダーウィン的選択によって進化したことは可能である、もし競合する部族間の戦争が十分激しいもので、そうした人間集団間の遺伝的差異が十分あるならば可能である、と結論づけた。

 彼は、人間の集団間の遺伝的差異はこれまで考えられていた以上に大きなものであり、戦争は初期の人間の社会的行動を形作ったに違いないほとんど絶えることのない活動であった、ということを示した。結果として、個人が犠牲になる利他的行為のおかげで、ある集団が生き残ったり別の集団が滅んだりした、と彼は言う。

 ボウレス博士によれば、「利他的な戦士」説は初期の人間社会における利他主義の進化を説明するシナリオの一つにすぎない。「戦士として死のリスクを進んで取ろうとする態度が利他主義の唯一の形式なのではありません…より利他的で、したがってより協調性のある集団はより生産的になるでしょうし、たとえば、より健康的だったり、より力強かったり、より多くのメンバーを擁するでしょうし、情報をより効率的に利用するでしょう」と、彼は言う。

 ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジの人類学者ルース・メイスによると、ボウレス博士の研究は、自然選択は個体のレベルではなく集団のレベルで作用するという提案をはるか昔に拒絶した利己的遺伝子説の一般的な考え方に反しているという。

 「社会的進化についての最近の文献は、特にヒトのような文化を形成する種においては集団選択が重要である場合もあると主張することによって、論争を再燃させたのです」と彼女は言う。

 『サイエンス』誌に載った別の研究では、人間であることを特徴づける別の性質――精巧な道具を製作したり、芸術や文化を発展させること――の進化をもたらした鍵となる因子は、生物学的変異に由来するというよりも集団の人口増加に由来したという科学者の提唱があった。

 ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジの科学者によれば、芸術のような人間の文化的形質が突然出現したのは、人口密度がある種の限界を超えて、観念の自由な交換を可能にしたときだったというのである」。  












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